2006年10月
2006年10月28日
連載･大山倍達ﾌﾟﾗｲﾍﾞｰﾄ迷言集(8)
月日が経つのは早いものである｡特に｢大山倍達正伝｣の執筆に掛かりっきりだったこの2､3年間､私は｢時間｣の観念を完全に消失してしまった気がする｡｢正伝｣の発売が7月末｡そして今は10月末…｡もう2006年は暮れに入っている｡だが私は､そんな世間の時間の流れに取り残されたような奇妙な違和感の中に生きている｡
私の話はいいのだ｡大山総裁の話である｡今回は大山総裁と私の息子の話だ｡
何故､のっけから｢月日が経つのは早い…｣と書いたかと言えば､息子が初めて大山総裁と会った､というより息子を総裁に会わせたのが1990年､息子が2歳の時だったからだ｡あの頃､私は息子が幼稚園に入ったら極真会館に入門させるつもりだった｡当時､まだ松井道場はなく､私は松井章圭よりも三瓶啓二と近しかった｡｢三瓶ｸﾞﾙｰﾌﾟ｣の末弟を気取っていた頃だ｡だから私は｢可能ならば三瓶先輩のもとに息子を預けたい…｣などと､今では想像だに出来ない事を考えていた｡
しかし､その後息子は浅草の松井道場に入門し､小学校入学を機に城西国分寺道場に移籍｡幾つもの少年大会で好成績を収め(江口さん夫婦の指導の賜物であると感謝している)､中学受験から中学入学を契機にいったん空手から離れて講道館入門｡6年間柔道を修業しつつ､空手は週1だけ私との親子稽古で細々と続け､そして今年の夏から米倉ｼﾞﾑでﾎﾞｸｼﾝｸﾞを始めた｡講道館は先日の館内試合で一応の成績を残したのを機に､週1の稽古に減らし､今はﾎﾞｸｼﾝｸﾞ一本槍である｡高校3年…息子は18になった｡来年､極真空手に復帰する予定だが､古巣の｢松井派城西｣か､盧山先生の極真館か､はたまた黒澤道場か､息子は思案中である｡ただどこに｢戻ろう｣が､立教大学に｢極真空手同好会｣を作る意志は変わらないようだ｡
矢沢永吉が言っていた｡｢時間はね､ﾋｭｳｯと過ぎる｣と｡あの日､1990年の3月某日｡私は息子の手を引いて聖路加病院の玄関に入ろうとしていた｡足を躓いて転んだ息子は額から血を流して泣いた｡｢男なら泣くな!｣と叱り､病院に入るとたまたま通り掛かった看護婦さんが息子を見付け､応急措置をしてくれた｡つまらね道草を食った私は少し不機嫌な息子の手を引いて人間ﾄﾞｯｸ病棟の大山総裁の部屋を探した｡ﾓｽｸﾞﾘｰﾝを基調とした上品な廊下を歩き､目指す病室を発見した私は安堵感とともに部屋をﾉｯｸした｡中からﾊﾞﾘﾄﾝのｵﾍﾟﾗ歌手を彷彿とさせる大山総裁の声が響いた｡私は病室に入った｡
病室には横溝玄象先生(現､極真館顧問)がいた｡総裁は息子を見ると､｢小島そっくりたね〜｡早く空手をやらせなさい｣と言った｡横溝先生は笑いながら､｢総裁､幾らなんでもまだ無理でしょう｡小島さん､息子さんは幾つ?｣と聞いた｡私は息子に答えさせた｡息子はさっきの怪我のせいで機嫌が直らずﾌﾞｽｯと｢2歳!｣と答えた｡横溝先生は息子の額に貼られた絆創膏を見付け､｢どうした､その傷は?｣と聞いてきた｡私が理由を話すと､総裁は｢元気たねえ､男の子は毎日怪我してるくらいのが元気でいいよ｣と言った後､｢小島､息子の名前は…そう大志だったね?一志はたった1つの道を全うするという意味で､小島そっくりだ｡まさに名は体を表すというが如しだ｡ても､大志はいいねえ｡小島より大物になるぞ｣と言った｡そして､何故かこだわるかのように｢小島､大志君は三瓶のところに預けちゃﾀﾒたよ｡性根がｽﾞﾙくなっちゃうじゃないのよ｡息子はねえ､本部に預けなさい｣と言った｡
繰り返すが､当時の私は完全な｢三瓶ｸﾞﾙｰﾌﾟ｣の下っぱだった｡だから大山総裁の｢ｽﾞﾙくなっちゃう云々｣の意味と言葉の意図がまるで理解出来ず､ただ総裁は息子をお膝元の総本部に入門させたいのだろう…程度にしか考えなかった｡ただ､横溝先生が何か含みのある笑みを私に向けていただけである｡今考えれば､すでに大山総裁は三瓶啓二の性格を把握していたに違いない｡
それはともかく､大山総裁は､｢どれ､大志｡私のところへ来なさい｣と呼んだ｡相変わらず不機嫌な息子は私に背中を押されて渋々総裁の近くに歩み寄った｡すると総裁は大志を抱き上げて､まるで｢高い高い｣のような仕草をした｡その瞬間､大志は総裁の顔面を蹴った｡それも左右連打である｡私は思わず横溝先生と目と目を合わせ､2人とも言葉が出なかった｡すると息子を抱いたまま大山総裁は言った｡
｢私はね〜､この歳まで数知れぬほどの実戦を潜り抜けてきたがねえ｡1度たりとも顔を蹴られた事はなかったよ｡どんな愚連隊もﾔｸｻﾞもﾌﾟﾛﾚｽﾗｰも､高名な空手家も､誰1人として､この大山倍達の顔に蹴りを当てた者はいなかった｡しかし私は修業が足りなかったよ｡たった2歳の子供の蹴りをまともにもらってしまったよ〜｡それも3発食らってしまった｡赤ん坊の蹴りを顔面に食らうようじゃ､私はまた山に籠もらなくてはならないじゃないか｡小島､大志が大きくなったらよ〜く言い聞かせてくれよ｡大山倍達の顔面に蹴りを入れた世界に1人の人間が大志だとね｣
1993年夏の総本部合宿に､私は息子を連れて訪ねた｡｢空手百科｣の打ち合せが目的だった｡5歳になる息子はすでに松井道場に通っていた｡合宿の指揮を取っていた横溝先生は久しぶりに会う息子に､｢君は総裁の顔に蹴りを入れた世界に1人の人間だって知っているか?｣と言いながら｢さあ､私を蹴ってこい｣と相手をしてくれた｡
大山総裁は息子を見つけるや否やみんなの前で言い放った｡
｢大志〜､私が唯一顔面に蹴りをもらって敗北した相手だよ｣
息子は意味が分からず､ただﾎﾟｶｰﾝとしていた｡
私の話はいいのだ｡大山総裁の話である｡今回は大山総裁と私の息子の話だ｡
何故､のっけから｢月日が経つのは早い…｣と書いたかと言えば､息子が初めて大山総裁と会った､というより息子を総裁に会わせたのが1990年､息子が2歳の時だったからだ｡あの頃､私は息子が幼稚園に入ったら極真会館に入門させるつもりだった｡当時､まだ松井道場はなく､私は松井章圭よりも三瓶啓二と近しかった｡｢三瓶ｸﾞﾙｰﾌﾟ｣の末弟を気取っていた頃だ｡だから私は｢可能ならば三瓶先輩のもとに息子を預けたい…｣などと､今では想像だに出来ない事を考えていた｡
しかし､その後息子は浅草の松井道場に入門し､小学校入学を機に城西国分寺道場に移籍｡幾つもの少年大会で好成績を収め(江口さん夫婦の指導の賜物であると感謝している)､中学受験から中学入学を契機にいったん空手から離れて講道館入門｡6年間柔道を修業しつつ､空手は週1だけ私との親子稽古で細々と続け､そして今年の夏から米倉ｼﾞﾑでﾎﾞｸｼﾝｸﾞを始めた｡講道館は先日の館内試合で一応の成績を残したのを機に､週1の稽古に減らし､今はﾎﾞｸｼﾝｸﾞ一本槍である｡高校3年…息子は18になった｡来年､極真空手に復帰する予定だが､古巣の｢松井派城西｣か､盧山先生の極真館か､はたまた黒澤道場か､息子は思案中である｡ただどこに｢戻ろう｣が､立教大学に｢極真空手同好会｣を作る意志は変わらないようだ｡
矢沢永吉が言っていた｡｢時間はね､ﾋｭｳｯと過ぎる｣と｡あの日､1990年の3月某日｡私は息子の手を引いて聖路加病院の玄関に入ろうとしていた｡足を躓いて転んだ息子は額から血を流して泣いた｡｢男なら泣くな!｣と叱り､病院に入るとたまたま通り掛かった看護婦さんが息子を見付け､応急措置をしてくれた｡つまらね道草を食った私は少し不機嫌な息子の手を引いて人間ﾄﾞｯｸ病棟の大山総裁の部屋を探した｡ﾓｽｸﾞﾘｰﾝを基調とした上品な廊下を歩き､目指す病室を発見した私は安堵感とともに部屋をﾉｯｸした｡中からﾊﾞﾘﾄﾝのｵﾍﾟﾗ歌手を彷彿とさせる大山総裁の声が響いた｡私は病室に入った｡
病室には横溝玄象先生(現､極真館顧問)がいた｡総裁は息子を見ると､｢小島そっくりたね〜｡早く空手をやらせなさい｣と言った｡横溝先生は笑いながら､｢総裁､幾らなんでもまだ無理でしょう｡小島さん､息子さんは幾つ?｣と聞いた｡私は息子に答えさせた｡息子はさっきの怪我のせいで機嫌が直らずﾌﾞｽｯと｢2歳!｣と答えた｡横溝先生は息子の額に貼られた絆創膏を見付け､｢どうした､その傷は?｣と聞いてきた｡私が理由を話すと､総裁は｢元気たねえ､男の子は毎日怪我してるくらいのが元気でいいよ｣と言った後､｢小島､息子の名前は…そう大志だったね?一志はたった1つの道を全うするという意味で､小島そっくりだ｡まさに名は体を表すというが如しだ｡ても､大志はいいねえ｡小島より大物になるぞ｣と言った｡そして､何故かこだわるかのように｢小島､大志君は三瓶のところに預けちゃﾀﾒたよ｡性根がｽﾞﾙくなっちゃうじゃないのよ｡息子はねえ､本部に預けなさい｣と言った｡
繰り返すが､当時の私は完全な｢三瓶ｸﾞﾙｰﾌﾟ｣の下っぱだった｡だから大山総裁の｢ｽﾞﾙくなっちゃう云々｣の意味と言葉の意図がまるで理解出来ず､ただ総裁は息子をお膝元の総本部に入門させたいのだろう…程度にしか考えなかった｡ただ､横溝先生が何か含みのある笑みを私に向けていただけである｡今考えれば､すでに大山総裁は三瓶啓二の性格を把握していたに違いない｡
それはともかく､大山総裁は､｢どれ､大志｡私のところへ来なさい｣と呼んだ｡相変わらず不機嫌な息子は私に背中を押されて渋々総裁の近くに歩み寄った｡すると総裁は大志を抱き上げて､まるで｢高い高い｣のような仕草をした｡その瞬間､大志は総裁の顔面を蹴った｡それも左右連打である｡私は思わず横溝先生と目と目を合わせ､2人とも言葉が出なかった｡すると息子を抱いたまま大山総裁は言った｡
｢私はね〜､この歳まで数知れぬほどの実戦を潜り抜けてきたがねえ｡1度たりとも顔を蹴られた事はなかったよ｡どんな愚連隊もﾔｸｻﾞもﾌﾟﾛﾚｽﾗｰも､高名な空手家も､誰1人として､この大山倍達の顔に蹴りを当てた者はいなかった｡しかし私は修業が足りなかったよ｡たった2歳の子供の蹴りをまともにもらってしまったよ〜｡それも3発食らってしまった｡赤ん坊の蹴りを顔面に食らうようじゃ､私はまた山に籠もらなくてはならないじゃないか｡小島､大志が大きくなったらよ〜く言い聞かせてくれよ｡大山倍達の顔面に蹴りを入れた世界に1人の人間が大志だとね｣
1993年夏の総本部合宿に､私は息子を連れて訪ねた｡｢空手百科｣の打ち合せが目的だった｡5歳になる息子はすでに松井道場に通っていた｡合宿の指揮を取っていた横溝先生は久しぶりに会う息子に､｢君は総裁の顔に蹴りを入れた世界に1人の人間だって知っているか?｣と言いながら｢さあ､私を蹴ってこい｣と相手をしてくれた｡
大山総裁は息子を見つけるや否やみんなの前で言い放った｡
｢大志〜､私が唯一顔面に蹴りをもらって敗北した相手だよ｣
息子は意味が分からず､ただﾎﾟｶｰﾝとしていた｡
2006年10月26日
11/23 極真館全日本選手権大会で､顔面殴打可｢真剣勝負ﾙｰﾙ｣を大公開!
11月23日､埼玉ｽｰﾊﾟｰｱﾘｰﾅで開催される極真館主催の全日本選手権で､顔面殴打可の新ﾙｰﾙ(真剣勝負ﾙｰﾙ)による組手試合がﾃﾞﾓﾝｽﾄﾚｰｼｮﾝとして公開される｡
極真館の無差別ﾄｰﾅﾒﾝﾄのﾙｰﾙが従来の｢極真ﾙｰﾙ｣と細かい部分で異なっている点も注目される｡基本的には顔面殴打禁止であるが､｢顔面への牽制｣を認め､｢顔面防御を無視した接近戦｣を徹底的に排除する点が極真館ﾙｰﾙの特徴だ｡
先日の新極真会の全日本選手権では1980年前後､大山総裁が｢相撲空手｣として嫌った組手が主流だった事はすでに｢講評｣の中で述べている｡要は､三瓶啓二が得意とした｢接近し､頭をつけ合った状態からの下突きの連打と下段を蹴り合う｣我慢比べのような組手である｡そんな時代遅れの組手がいまだ新極真会の大会では繰り広げられている｡しかし､極真館ﾙｰﾙでは､このような｢実戦性｣を無視した組手を｢ﾙｰﾙとして規制する事｣で完全に排除している｡例えば､顔面防御を無視して相手に接近したり､攻撃を出さずに接近戦に持ち込もうとしただけで反則を取られる｡一方で手による顔面への牽制も認められている｡相手が顔面防御をせず､やみくもに接近攻撃を挑んできた場合､牽制として出した突き(掌底)が相手の顔面を捕えても反則は取られない｡
そもそも極真会館の組手試合は､第1回から顔面殴打を禁止してはいたが､顔面への牽制または牽制の結果の殴打は認められていた｡
｢普段の道場組手では当たり前に行われている顔面殴打を､試合ではあえて省いた形で戦う｡だから間合いも技も､顔面殴打を想定して戦うのが本来の極真空手の試合である｣
これは生前の大山総裁の言葉である｡しかし､｢技術は競技ﾙｰﾙに則って進化する｣という法則により､この30年の間に極真空手の組手は大きく変貌してきた｡その1つの形が三瓶に代表される新極真会の｢相撲空手｣であり､現在､松井派極真会館で主流となっているﾌｯﾄﾜｰｸを駆使した組手である｡松井派極真会館の組手は｢競技として最も進化した形態｣と言ってもいいが､それは大山総裁が理想とした組手と大きくかけ離れたものである事は言うまでもない｡
そこで極真館は｢試合ﾙｰﾙの変更｣という画期的な措置により､｢極真空手の原点回帰｣を図ったと言える｡この試みは今年春のｳｪｲﾄ制大会から始まったが､簡単に言えば1969年の第1回大会から盧山初雄が優勝した第5回大会頃までの試合様相に近い｡ただ当時の組手は攻防がやや単発だった｡極真館の試合は､初期の極真会館の試合に多彩なｺﾝﾋﾞﾈｰｼｮﾝをﾌﾟﾗｽした組手をｲﾒｰｼﾞすれば分かりやすいだろう｡
極真館館長の盧山初雄は､｢本来の極真空手が備えていた武道としての空手､かつ華麗な組手を目指す｣と語っている｡
以下､極真館の試合ﾙｰﾙ規定の要点を抜粋する｡武道性を重んじるという意味と接近戦での攻防の反則について､松井派極真会館や新極真会の試合規則にはない規定が盛り込まれている｡
[組手と勝敗]
1/組手は武道性を重んじる事｡安全性を考慮し､試合規則で禁じている危険部位への攻撃に対しても防御できる間合いを考える事｡
2/空手道の試合は礼節を重んじる｡ｶﾞｯﾂﾎﾟｰｽﾞなど試合場で相手に対して礼節を欠く行為を禁止する｡
[反則]
･両足を揃えて下突きの連打を続けた場合｡
･技を出さないで接近し､手や体を接触させて技を出さない場合｡あるいは接触させたまま攻防した場合｡
･技を出して接近し､その後手や体を接触させて技を出さない場合｡あるいは接触させたまま攻防した場合｡このような場合は近づいた方を｢反則｣とする｡接近した方が間合いをあける事｡尚､瞬間的な接触については｢反則｣としない｡
･前に出る時は､必ず技を出す事｡技を出さずに前進しても攻撃とは判断せず、間合い及び顔面の防御を無視したとみなし､広義の意味で｢押し｣の｢反則｣とする｡
前記したように､今大会では来秋から極真館主催の全日本ｳｪｲﾄ制選手権で正式に採用される新ﾙｰﾙ(真剣勝負ﾙｰﾙ)による特別試合がﾃﾞﾓﾝｽﾄﾚｰｼｮﾝ公開される｡
真剣勝負ﾙｰﾙは､特別製のｻﾎﾟｰﾀｰを拳と肘に着用した上で､顔面殴打､顔面肘打ち､更には3秒以内での掴み･投げ･締め技･関節技を認めるﾉｯｸﾀﾞｳﾝ方式で行われる｡
｢極真空手の原点である大山道場時代の組手の再現｣を目指したという新ﾙｰﾙは､まさしく盧山初雄が語る｢原点回帰｣そのものの組手と言える｡数年間の試行錯誤はありえるとしても､この｢真剣勝負ﾙｰﾙ｣が極真空手の新たなる革命となる可能性は限りなく高い｡
大会概要
第4回全日本空手道選手権大会
2006年11月23日(木･祝)
開場/12:00(開会式13:00)
会場/埼玉ｽｰﾊﾟｰｱﾘｰﾅ
主催/極真空手道連盟 極真館
共催/財団法人極真奨学会
極真館の無差別ﾄｰﾅﾒﾝﾄのﾙｰﾙが従来の｢極真ﾙｰﾙ｣と細かい部分で異なっている点も注目される｡基本的には顔面殴打禁止であるが､｢顔面への牽制｣を認め､｢顔面防御を無視した接近戦｣を徹底的に排除する点が極真館ﾙｰﾙの特徴だ｡
先日の新極真会の全日本選手権では1980年前後､大山総裁が｢相撲空手｣として嫌った組手が主流だった事はすでに｢講評｣の中で述べている｡要は､三瓶啓二が得意とした｢接近し､頭をつけ合った状態からの下突きの連打と下段を蹴り合う｣我慢比べのような組手である｡そんな時代遅れの組手がいまだ新極真会の大会では繰り広げられている｡しかし､極真館ﾙｰﾙでは､このような｢実戦性｣を無視した組手を｢ﾙｰﾙとして規制する事｣で完全に排除している｡例えば､顔面防御を無視して相手に接近したり､攻撃を出さずに接近戦に持ち込もうとしただけで反則を取られる｡一方で手による顔面への牽制も認められている｡相手が顔面防御をせず､やみくもに接近攻撃を挑んできた場合､牽制として出した突き(掌底)が相手の顔面を捕えても反則は取られない｡
そもそも極真会館の組手試合は､第1回から顔面殴打を禁止してはいたが､顔面への牽制または牽制の結果の殴打は認められていた｡
｢普段の道場組手では当たり前に行われている顔面殴打を､試合ではあえて省いた形で戦う｡だから間合いも技も､顔面殴打を想定して戦うのが本来の極真空手の試合である｣
これは生前の大山総裁の言葉である｡しかし､｢技術は競技ﾙｰﾙに則って進化する｣という法則により､この30年の間に極真空手の組手は大きく変貌してきた｡その1つの形が三瓶に代表される新極真会の｢相撲空手｣であり､現在､松井派極真会館で主流となっているﾌｯﾄﾜｰｸを駆使した組手である｡松井派極真会館の組手は｢競技として最も進化した形態｣と言ってもいいが､それは大山総裁が理想とした組手と大きくかけ離れたものである事は言うまでもない｡
そこで極真館は｢試合ﾙｰﾙの変更｣という画期的な措置により､｢極真空手の原点回帰｣を図ったと言える｡この試みは今年春のｳｪｲﾄ制大会から始まったが､簡単に言えば1969年の第1回大会から盧山初雄が優勝した第5回大会頃までの試合様相に近い｡ただ当時の組手は攻防がやや単発だった｡極真館の試合は､初期の極真会館の試合に多彩なｺﾝﾋﾞﾈｰｼｮﾝをﾌﾟﾗｽした組手をｲﾒｰｼﾞすれば分かりやすいだろう｡
極真館館長の盧山初雄は､｢本来の極真空手が備えていた武道としての空手､かつ華麗な組手を目指す｣と語っている｡
以下､極真館の試合ﾙｰﾙ規定の要点を抜粋する｡武道性を重んじるという意味と接近戦での攻防の反則について､松井派極真会館や新極真会の試合規則にはない規定が盛り込まれている｡
[組手と勝敗]
1/組手は武道性を重んじる事｡安全性を考慮し､試合規則で禁じている危険部位への攻撃に対しても防御できる間合いを考える事｡
2/空手道の試合は礼節を重んじる｡ｶﾞｯﾂﾎﾟｰｽﾞなど試合場で相手に対して礼節を欠く行為を禁止する｡
[反則]
･両足を揃えて下突きの連打を続けた場合｡
･技を出さないで接近し､手や体を接触させて技を出さない場合｡あるいは接触させたまま攻防した場合｡
･技を出して接近し､その後手や体を接触させて技を出さない場合｡あるいは接触させたまま攻防した場合｡このような場合は近づいた方を｢反則｣とする｡接近した方が間合いをあける事｡尚､瞬間的な接触については｢反則｣としない｡
･前に出る時は､必ず技を出す事｡技を出さずに前進しても攻撃とは判断せず、間合い及び顔面の防御を無視したとみなし､広義の意味で｢押し｣の｢反則｣とする｡
前記したように､今大会では来秋から極真館主催の全日本ｳｪｲﾄ制選手権で正式に採用される新ﾙｰﾙ(真剣勝負ﾙｰﾙ)による特別試合がﾃﾞﾓﾝｽﾄﾚｰｼｮﾝ公開される｡
真剣勝負ﾙｰﾙは､特別製のｻﾎﾟｰﾀｰを拳と肘に着用した上で､顔面殴打､顔面肘打ち､更には3秒以内での掴み･投げ･締め技･関節技を認めるﾉｯｸﾀﾞｳﾝ方式で行われる｡
｢極真空手の原点である大山道場時代の組手の再現｣を目指したという新ﾙｰﾙは､まさしく盧山初雄が語る｢原点回帰｣そのものの組手と言える｡数年間の試行錯誤はありえるとしても､この｢真剣勝負ﾙｰﾙ｣が極真空手の新たなる革命となる可能性は限りなく高い｡
大会概要
第4回全日本空手道選手権大会
2006年11月23日(木･祝)
開場/12:00(開会式13:00)
会場/埼玉ｽｰﾊﾟｰｱﾘｰﾅ
主催/極真空手道連盟 極真館
共催/財団法人極真奨学会
2006年10月23日
新極真会全日本大会 �す嵒�ｰｰ最新改訂版
06年10月22日､新極真会主催全日本選手権最終日｡
大会の見方が松井派との比較になりがちな点はご容赦願いたい｡
観客の入りは6ｰ7割程度､例年通りといったところだが､ﾃﾚﾋﾞ媒体を通じてKｰ1などの｢格闘ｼｮｰ｣が一般化した現在､｢武道｣｢ｱﾏﾁｭｱ｣を提唱する｢極真空手｣であるならば､以前のように観客動員数でその大会の善し悪しを判断する時代はすでに終わったと私は認識している｡
特に新極真会の大会は､大山総裁時代の流れを継承する､派手な演出を押さえた武道大会然とした点が評価されてきた｡その点については私も新極真会の大会運営には共感を覚える｡ただ､そうは言っても1万人以上の収容力を持つ東京体育館を会場にしている為､閑散とした観客席を見てしまうと一種の侘しさを感じない訳にはいかない｡極真空手の全日本選手権といえば､昔から東京体育館というｲﾒｰｼﾞが強く､主催者が会場を東京体育館にこだわる意識も理解できる｡だが､新極真会が｢格闘ｼｮｰ｣と一線を画した武道大会を提唱するならば､今後はもう少し収容力の小さい､たとえば代々木第2体育館などでの開催を考えてもいい気がする｡
最終日は試合開始が11時､午後4時過ぎに終了と､例年よりｽﾑｰｽﾞな運営だった｡だが初日のもたつきを考慮するならば､ﾀｲﾑｽｹｼﾞｭｰﾙの管理にはまだまだ多くの課題が残っていると言える｡
さて試合だが､松井派と比較して大きく2点､気になる部分を感じた｡
まず第1に絶対的な選手層の薄さである｡勿論､これは新極真会に限った問題ではない｡大山総裁亡き後､分裂を繰り返した団体である以上､松井派も連合会､極真館も同様である｡しかし､新極真会の問題は､新人の台頭がこの10年間､殆ど見られないところにある｡準決勝に残った選手達は大方の予想通り､｢新極真会三強｣と呼ばれる鈴木国博(36)､塚本徳臣(32)､塚越孝行(29)の3人と､やはりﾍﾞﾃﾗﾝの野本尚裕(36)の4人だった｡彼らの他にも新保智(38)､谷川光(36)達､多くのﾍﾞﾃﾗﾝ選手がいまだ最前線で活躍するなど､選手達の顔触れは一見すると10年前と全く変わらない印象を受ける｡
ここまで酷い｢選手世代の固定化｣は空手だけでなくあらゆる競技大会を見ても珍しい現象だ｡この数年､新極真会の会員数は減少傾向にある｡それでもまだ1万5千人を超す新極真会は､規模からいえば松井派に次ぐ勢力をかろうじて維持している｡にも拘らず､この選手層の薄さはどのように解釈する事が出来るのだろう?
第2に､以上挙げた選手層の薄さ､世代交替の停滞にも関係する事だが､新極真会の選手達の組手=戦法が､優勝した塚本以外､総体的に同じような印象を受けた｡簡単に言えば､互いに接近し､時には胸を付け合ってのﾎﾞﾃﾞｨの打ち合いと下段蹴りの応酬というものである｡この戦法も10年間全く変わらない｡一見､真っ向勝負の迫力がある事から､大山総裁が提唱していた｢一本を取る組手｣｢倒しにいく組手｣という印象が強く､このような所謂｢ｶﾞｯﾁﾝｺ｣の組手主流の新極真会を評価する声も少なくない｡だが､それは単なる郷愁であると同時に幻想に過ぎない｡
松井派の選手達の組手は多様化が進んでいる｡それでも印象的には､左右のｽﾃｯﾌﾟを駆使しつつ多彩な技と手数を計算したような攻撃ﾊﾟﾀｰﾝが主流だと言える｡このような戦法は動きが軽快であるが故に､｢一本を取る組手｣｢倒しにいく組手｣と正反対の｢最初から判定を想定したﾎﾟｲﾝﾄを積み重ねる組手｣といったｲﾒｰｼﾞを持たれる事が少なくない｡実際､松井派の大会は｢一本勝ち｣が少ないのだが､表面的な動きだけを取って｢松井派の組手はﾎﾟｲﾝﾄ狙いが主流｣という事にはならない｡そもそも､これらの戦法は1980年代初期､｢三誠時代｣の終焉とともに台頭してきた｢城西支部｣の戦法が源流である｡当時､城西支部所属の選手達は､この戦法によってKOの山を築いた｡ただ､このような｢必殺｣の組手は最初から城西支部が計算していたものではなかった｡当時､城西支部長だった山田雅稔は｢本来､ｳﾁはﾊﾟﾝﾁと下段を積み重ねる事で､相手が倒れないにせよ､確実に判定で勝てる事を狙ったんです｡ところが思いの他､ｺﾝﾋﾞﾈｰｼｮﾝと返し技が功を博して相手が倒れてくれた｣と語っている｡
この城西流の組手戦法が時代を経るごとに､まさに山田が言うような｢判定で勝つ｣方向に流れていった｡だが､それは結果論に過ぎない｡松井派の試合でなかなか｢一本勝ち｣が見られないのは､選手達の技術の差が拮抗しているからであり､仮に両者に実力差があれば｢一本勝ち｣が増えるのは言うまでもない｡｢技術は競技ﾙｰﾙに則って向上する｣という原則論から見るならば､現在の松井派で主流となっている組手=戦法はきわめて理に適っていると評価出来る｡
さて､新極真会の組手=戦法である｡そう考えてみると､現在の新極真会で主流となっている｢ｶﾞｯﾁﾝｺ｣の接近戦は大分時代遅れの戦法だという事が分かる｡一言でいえば｢三誠時代｣前後の1980年頃の組手である｡
1990年代初期､大山総裁の晩年だが､すでに極真会館の試合技術は｢三誠時代｣から遥かに進化した戦法に変わっていた｡それはまさに､現在の松井派の流れに通じる､左右の動きを駆使した軽快な組手である｡技の多様化も目覚ましく､ｶｶﾄ落しや後ろ足への下段蹴り､変則上段回し蹴りなど､明らかに｢極真空手は進化しつつある｣と実感させる充実感に溢れていた｡
大山総裁の死後､極真会館を襲った分裂騒動により各団体の選手層は半減し､それ故､技術進化の速度も鈍くなった｡それは必然であり仕方のない事ではある｡松井派にも新人の台頭を押さえるべきﾍﾞﾃﾗﾝ選手が少ないという課題が存在する事は周知の事実だ｡
しかし…｡この10年間､新極真会の選手達の技術は､まるで1980年にﾀｲﾑｽﾘｯﾌﾟしたかのようだ｡一切の進化が見られないのだ｡｢一本勝ちを目指す組手｣｢倒しにいく組手｣の理想形がこれであっていいはずはない｡何故なら､新極真会で主流となっている｢ｶﾞｯﾁﾝｺ｣の組手は遥か25年も前に淘汰されたものだからである｡残念ながら､これが新極真会の空手技術の現状なのである｡
では､何故新極真会のみ組手戦法が退化し､この10年間､技術が停滞してしまったのか?最大の理由は支部長達の意識に見出だす事が出来る｡極真会館の分裂時､ｸｰﾃﾞﾀｰ側の新極真会(支部長協議会派)のﾒﾝﾊﾞｰの多くが1980年前後に活躍した選手達だった｡三瓶､柳渡､三好､大浜､金田､小林…｡特に三瓶に､新極真会の組手の雛形を見る事が出来る｡一方､新極真会には｢三瓶ｸﾞﾙｰﾌﾟ｣以外にも､会長･緑健児が率いる元城南勢も力を持っているはずである｡かつて｢城南支部｣と言えば､城西支部と並び､全日本選手権を席巻した強豪支部である｡だが､今の新極真会の大会に､かつての｢城南｣の色を感じ取る事は出来ない｡その原因が何なのか分からない｡
少なくともこれだけは断言できるだろう｡松井派の支部長達の多くが｢組織｣｢派閥｣活動に一線を引き､選手育成に精を出しているのに対し､新極真会の支部長達は常に何らかの形で｢組織｣｢派閥｣活動に関わり選手育成をなおざりにしているという点だ｡組織･構造的な違いがある以上､松井派と新極真会を同列に比較する事は出来ないが､少なくとも新極真会の支部長達は好むと好まざるに拘らず｢派閥抗争｣の渦中に身を置いている｡新極真会の選手ﾚﾍﾞﾙが停滞または後退しているのは､このような組織環境以外に説明する事は出来ない｡
ちなみに､もう1点､技術停滞の理由として挙げられるのは､今の新極真会には｢城西｣のﾒﾝﾊﾞｰがいないという事実だ｡前述したように､1980年代以降の極真空手を牽引してきたのは｢城西｣と｢城南｣勢であった事を否定する者はいないだろう｡もし､三和純や増田章ら､｢城西｣ｸﾞﾙｰﾌﾟが新極真会を離脱せず残っていたならば､ここまでの技術の硬直化は起こらなかったのではないだろうか｡
新極真会の代名詞とも言える｢接近して胸を付けながらの下突きと下段蹴りの応酬｣を許しているのは当然ながら審判を行う支部長である｡松井派の大会では､審判は神経質なほどに｢掴み､掌底押し｣に対して敏感である｡何故なら､大山総裁は｢相撲空手｣に陥りやすい｢掴み､掌底押し｣を徹底的に嫌ったからである｡しかし､新極真会では明らかに審判達は｢掴み､掌底押し｣に鈍感だ｡大山総裁時代､1度は淘汰されたはずの組手に何の疑問も抱かない旧態依然とした審判達の｢感覚｣にこそ､あらゆる新極真会が抱える問題が内包されているように私には思えてならない｡
最後に､優勝した塚本について触れておく｡彼の技術もこの10年間､全く進歩がない｡長身と長いﾘｰﾁを生かした直線的な攻撃は確かに破壊力に満ちている｡しかし下段蹴りは勿論､回し蹴りなどの回転技を殆ど用いず､またこれらの技のﾃﾞｨﾌｪﾝｽの甘さも数年前と全く変わらない｡ある意味､ｾｵﾘｰのない破天荒な組手が塚本の身上だが､彼がその組手で全日本のﾄｯﾌﾟを取っている限り､新極真会の発展はないだろう｡
今後､財団法人極真奨学会による大同団結､極真館の急成長が見込まれる中､その存在意義さえ失いつつある新極真会…｡派閥抗争の末に彼らが何を目指していくのか?暫らく注目する必要があるだろう｡
大会の見方が松井派との比較になりがちな点はご容赦願いたい｡
観客の入りは6ｰ7割程度､例年通りといったところだが､ﾃﾚﾋﾞ媒体を通じてKｰ1などの｢格闘ｼｮｰ｣が一般化した現在､｢武道｣｢ｱﾏﾁｭｱ｣を提唱する｢極真空手｣であるならば､以前のように観客動員数でその大会の善し悪しを判断する時代はすでに終わったと私は認識している｡
特に新極真会の大会は､大山総裁時代の流れを継承する､派手な演出を押さえた武道大会然とした点が評価されてきた｡その点については私も新極真会の大会運営には共感を覚える｡ただ､そうは言っても1万人以上の収容力を持つ東京体育館を会場にしている為､閑散とした観客席を見てしまうと一種の侘しさを感じない訳にはいかない｡極真空手の全日本選手権といえば､昔から東京体育館というｲﾒｰｼﾞが強く､主催者が会場を東京体育館にこだわる意識も理解できる｡だが､新極真会が｢格闘ｼｮｰ｣と一線を画した武道大会を提唱するならば､今後はもう少し収容力の小さい､たとえば代々木第2体育館などでの開催を考えてもいい気がする｡
最終日は試合開始が11時､午後4時過ぎに終了と､例年よりｽﾑｰｽﾞな運営だった｡だが初日のもたつきを考慮するならば､ﾀｲﾑｽｹｼﾞｭｰﾙの管理にはまだまだ多くの課題が残っていると言える｡
さて試合だが､松井派と比較して大きく2点､気になる部分を感じた｡
まず第1に絶対的な選手層の薄さである｡勿論､これは新極真会に限った問題ではない｡大山総裁亡き後､分裂を繰り返した団体である以上､松井派も連合会､極真館も同様である｡しかし､新極真会の問題は､新人の台頭がこの10年間､殆ど見られないところにある｡準決勝に残った選手達は大方の予想通り､｢新極真会三強｣と呼ばれる鈴木国博(36)､塚本徳臣(32)､塚越孝行(29)の3人と､やはりﾍﾞﾃﾗﾝの野本尚裕(36)の4人だった｡彼らの他にも新保智(38)､谷川光(36)達､多くのﾍﾞﾃﾗﾝ選手がいまだ最前線で活躍するなど､選手達の顔触れは一見すると10年前と全く変わらない印象を受ける｡
ここまで酷い｢選手世代の固定化｣は空手だけでなくあらゆる競技大会を見ても珍しい現象だ｡この数年､新極真会の会員数は減少傾向にある｡それでもまだ1万5千人を超す新極真会は､規模からいえば松井派に次ぐ勢力をかろうじて維持している｡にも拘らず､この選手層の薄さはどのように解釈する事が出来るのだろう?
第2に､以上挙げた選手層の薄さ､世代交替の停滞にも関係する事だが､新極真会の選手達の組手=戦法が､優勝した塚本以外､総体的に同じような印象を受けた｡簡単に言えば､互いに接近し､時には胸を付け合ってのﾎﾞﾃﾞｨの打ち合いと下段蹴りの応酬というものである｡この戦法も10年間全く変わらない｡一見､真っ向勝負の迫力がある事から､大山総裁が提唱していた｢一本を取る組手｣｢倒しにいく組手｣という印象が強く､このような所謂｢ｶﾞｯﾁﾝｺ｣の組手主流の新極真会を評価する声も少なくない｡だが､それは単なる郷愁であると同時に幻想に過ぎない｡
松井派の選手達の組手は多様化が進んでいる｡それでも印象的には､左右のｽﾃｯﾌﾟを駆使しつつ多彩な技と手数を計算したような攻撃ﾊﾟﾀｰﾝが主流だと言える｡このような戦法は動きが軽快であるが故に､｢一本を取る組手｣｢倒しにいく組手｣と正反対の｢最初から判定を想定したﾎﾟｲﾝﾄを積み重ねる組手｣といったｲﾒｰｼﾞを持たれる事が少なくない｡実際､松井派の大会は｢一本勝ち｣が少ないのだが､表面的な動きだけを取って｢松井派の組手はﾎﾟｲﾝﾄ狙いが主流｣という事にはならない｡そもそも､これらの戦法は1980年代初期､｢三誠時代｣の終焉とともに台頭してきた｢城西支部｣の戦法が源流である｡当時､城西支部所属の選手達は､この戦法によってKOの山を築いた｡ただ､このような｢必殺｣の組手は最初から城西支部が計算していたものではなかった｡当時､城西支部長だった山田雅稔は｢本来､ｳﾁはﾊﾟﾝﾁと下段を積み重ねる事で､相手が倒れないにせよ､確実に判定で勝てる事を狙ったんです｡ところが思いの他､ｺﾝﾋﾞﾈｰｼｮﾝと返し技が功を博して相手が倒れてくれた｣と語っている｡
この城西流の組手戦法が時代を経るごとに､まさに山田が言うような｢判定で勝つ｣方向に流れていった｡だが､それは結果論に過ぎない｡松井派の試合でなかなか｢一本勝ち｣が見られないのは､選手達の技術の差が拮抗しているからであり､仮に両者に実力差があれば｢一本勝ち｣が増えるのは言うまでもない｡｢技術は競技ﾙｰﾙに則って向上する｣という原則論から見るならば､現在の松井派で主流となっている組手=戦法はきわめて理に適っていると評価出来る｡
さて､新極真会の組手=戦法である｡そう考えてみると､現在の新極真会で主流となっている｢ｶﾞｯﾁﾝｺ｣の接近戦は大分時代遅れの戦法だという事が分かる｡一言でいえば｢三誠時代｣前後の1980年頃の組手である｡
1990年代初期､大山総裁の晩年だが､すでに極真会館の試合技術は｢三誠時代｣から遥かに進化した戦法に変わっていた｡それはまさに､現在の松井派の流れに通じる､左右の動きを駆使した軽快な組手である｡技の多様化も目覚ましく､ｶｶﾄ落しや後ろ足への下段蹴り､変則上段回し蹴りなど､明らかに｢極真空手は進化しつつある｣と実感させる充実感に溢れていた｡
大山総裁の死後､極真会館を襲った分裂騒動により各団体の選手層は半減し､それ故､技術進化の速度も鈍くなった｡それは必然であり仕方のない事ではある｡松井派にも新人の台頭を押さえるべきﾍﾞﾃﾗﾝ選手が少ないという課題が存在する事は周知の事実だ｡
しかし…｡この10年間､新極真会の選手達の技術は､まるで1980年にﾀｲﾑｽﾘｯﾌﾟしたかのようだ｡一切の進化が見られないのだ｡｢一本勝ちを目指す組手｣｢倒しにいく組手｣の理想形がこれであっていいはずはない｡何故なら､新極真会で主流となっている｢ｶﾞｯﾁﾝｺ｣の組手は遥か25年も前に淘汰されたものだからである｡残念ながら､これが新極真会の空手技術の現状なのである｡
では､何故新極真会のみ組手戦法が退化し､この10年間､技術が停滞してしまったのか?最大の理由は支部長達の意識に見出だす事が出来る｡極真会館の分裂時､ｸｰﾃﾞﾀｰ側の新極真会(支部長協議会派)のﾒﾝﾊﾞｰの多くが1980年前後に活躍した選手達だった｡三瓶､柳渡､三好､大浜､金田､小林…｡特に三瓶に､新極真会の組手の雛形を見る事が出来る｡一方､新極真会には｢三瓶ｸﾞﾙｰﾌﾟ｣以外にも､会長･緑健児が率いる元城南勢も力を持っているはずである｡かつて｢城南支部｣と言えば､城西支部と並び､全日本選手権を席巻した強豪支部である｡だが､今の新極真会の大会に､かつての｢城南｣の色を感じ取る事は出来ない｡その原因が何なのか分からない｡
少なくともこれだけは断言できるだろう｡松井派の支部長達の多くが｢組織｣｢派閥｣活動に一線を引き､選手育成に精を出しているのに対し､新極真会の支部長達は常に何らかの形で｢組織｣｢派閥｣活動に関わり選手育成をなおざりにしているという点だ｡組織･構造的な違いがある以上､松井派と新極真会を同列に比較する事は出来ないが､少なくとも新極真会の支部長達は好むと好まざるに拘らず｢派閥抗争｣の渦中に身を置いている｡新極真会の選手ﾚﾍﾞﾙが停滞または後退しているのは､このような組織環境以外に説明する事は出来ない｡
ちなみに､もう1点､技術停滞の理由として挙げられるのは､今の新極真会には｢城西｣のﾒﾝﾊﾞｰがいないという事実だ｡前述したように､1980年代以降の極真空手を牽引してきたのは｢城西｣と｢城南｣勢であった事を否定する者はいないだろう｡もし､三和純や増田章ら､｢城西｣ｸﾞﾙｰﾌﾟが新極真会を離脱せず残っていたならば､ここまでの技術の硬直化は起こらなかったのではないだろうか｡
新極真会の代名詞とも言える｢接近して胸を付けながらの下突きと下段蹴りの応酬｣を許しているのは当然ながら審判を行う支部長である｡松井派の大会では､審判は神経質なほどに｢掴み､掌底押し｣に対して敏感である｡何故なら､大山総裁は｢相撲空手｣に陥りやすい｢掴み､掌底押し｣を徹底的に嫌ったからである｡しかし､新極真会では明らかに審判達は｢掴み､掌底押し｣に鈍感だ｡大山総裁時代､1度は淘汰されたはずの組手に何の疑問も抱かない旧態依然とした審判達の｢感覚｣にこそ､あらゆる新極真会が抱える問題が内包されているように私には思えてならない｡
最後に､優勝した塚本について触れておく｡彼の技術もこの10年間､全く進歩がない｡長身と長いﾘｰﾁを生かした直線的な攻撃は確かに破壊力に満ちている｡しかし下段蹴りは勿論､回し蹴りなどの回転技を殆ど用いず､またこれらの技のﾃﾞｨﾌｪﾝｽの甘さも数年前と全く変わらない｡ある意味､ｾｵﾘｰのない破天荒な組手が塚本の身上だが､彼がその組手で全日本のﾄｯﾌﾟを取っている限り､新極真会の発展はないだろう｡
今後､財団法人極真奨学会による大同団結､極真館の急成長が見込まれる中､その存在意義さえ失いつつある新極真会…｡派閥抗争の末に彼らが何を目指していくのか?暫らく注目する必要があるだろう｡
2006年10月22日
新極真会全日本大会 ��最終日試合結果速報
新極真会主催全日本大会
試合結果
(mugensha)
男子決勝戦｡準決勝で野本を延長の末判定で下した塚越と､鈴木をわずか83秒左上段膝蹴りによる一本勝ちで下した塚本の決戦となった｡本戦､延長戦､再延長戦と互いに決め手がないまま試合は体重判定へ｡体重測定の結果､塚越115.6��､塚本97.5�圓�10�坩幣紊梁僚添垢砲茲蠶曜椶陵ゾ�｡
この日の塚本は4回戦､準々決勝も至近距離からの上段膝蹴りを決め､技有りを取るなど絶好調であった｡
｢第2日目結果｣
●男子
優勝/塚本徳臣(世田谷塚本道場)
準優勝/塚越孝行(千葉松戸道場)
第3位/鈴木国博(厚木赤羽)
第4位/野本尚裕(愛媛)
第5位/久野浄英(東京城南川崎)
第6位/平山竜太郎(札幌東)
第7位/新保智(鹿児島)
第8位/吉田富和(福岡)
敢闘賞/山田一仁(大阪北)
技能賞/渡辺大士(福岡)
試割賞/久野浄英(東京城南川崎)､鈴木国博(厚木赤羽)
ﾏｽ大山賞/塚本徳臣(世田谷塚本道場)
●女子
優勝/佐藤弥紗希(和歌山)
準優勝/福田美み子(群馬)
第3位/兼光のぞみ(大阪北)
第4位/砂川久美子(総本部)
技能賞/兼光のぞみ(大阪北)
試合結果
(mugensha)
男子決勝戦｡準決勝で野本を延長の末判定で下した塚越と､鈴木をわずか83秒左上段膝蹴りによる一本勝ちで下した塚本の決戦となった｡本戦､延長戦､再延長戦と互いに決め手がないまま試合は体重判定へ｡体重測定の結果､塚越115.6��､塚本97.5�圓�10�坩幣紊梁僚添垢砲茲蠶曜椶陵ゾ�｡
この日の塚本は4回戦､準々決勝も至近距離からの上段膝蹴りを決め､技有りを取るなど絶好調であった｡
｢第2日目結果｣
●男子
優勝/塚本徳臣(世田谷塚本道場)
準優勝/塚越孝行(千葉松戸道場)
第3位/鈴木国博(厚木赤羽)
第4位/野本尚裕(愛媛)
第5位/久野浄英(東京城南川崎)
第6位/平山竜太郎(札幌東)
第7位/新保智(鹿児島)
第8位/吉田富和(福岡)
敢闘賞/山田一仁(大阪北)
技能賞/渡辺大士(福岡)
試割賞/久野浄英(東京城南川崎)､鈴木国博(厚木赤羽)
ﾏｽ大山賞/塚本徳臣(世田谷塚本道場)
●女子
優勝/佐藤弥紗希(和歌山)
準優勝/福田美み子(群馬)
第3位/兼光のぞみ(大阪北)
第4位/砂川久美子(総本部)
技能賞/兼光のぞみ(大阪北)
2006年10月21日
新極真会全日本大会 �‖�1日目の試合結果
新極真会主催による全日本選手権(東京体育館)第1日目は午前10時頃に始まり､18時半に終了｡
波乱(ｼｰﾄﾞ選手で負けた選手)は､前大会で準優勝した前川憲司(徳島北東あわじ)が3回戦で渡辺秀樹の下段蹴りで1本負けしたのと､木賊浩一(厚木赤羽)が保本学に判定負けの試合､さらに小泉英明(茅ケ崎小泉道場)が北島悠悠に再々延長で判定敗けした3試合のみ｡
(株式会社 夢現舎調べ)
●第1日目結果(mugensha)
○男子ﾍﾞｽﾄ16
・Aﾌﾞﾛｯｸ
渡辺秀樹(厚木赤羽)
吉田富和(福岡)
北島悠悠(白蓮会館)
野本尚裕(愛媛)
・Bﾌﾞﾛｯｸ
山田一仁(大阪北)
新保智(鹿児島)
保本学(横浜木元道場)
塚越孝行(千葉松戸道場)
・Cﾌﾞﾛｯｸ
久野浄英(東京城南川崎)
森健太(福岡)
酒井裕樹(北海道高森道場)
塚本徳臣(世田谷塚本道場)
・Dﾌﾞﾛｯｸ
谷川光(西神奈川)
平山竜太郎(札幌東道場)
渡辺大士(福岡)
鈴木国博(厚木赤羽)
波乱(ｼｰﾄﾞ選手で負けた選手)は､前大会で準優勝した前川憲司(徳島北東あわじ)が3回戦で渡辺秀樹の下段蹴りで1本負けしたのと､木賊浩一(厚木赤羽)が保本学に判定負けの試合､さらに小泉英明(茅ケ崎小泉道場)が北島悠悠に再々延長で判定敗けした3試合のみ｡
(株式会社 夢現舎調べ)
●第1日目結果(mugensha)
○男子ﾍﾞｽﾄ16
・Aﾌﾞﾛｯｸ
渡辺秀樹(厚木赤羽)
吉田富和(福岡)
北島悠悠(白蓮会館)
野本尚裕(愛媛)
・Bﾌﾞﾛｯｸ
山田一仁(大阪北)
新保智(鹿児島)
保本学(横浜木元道場)
塚越孝行(千葉松戸道場)
・Cﾌﾞﾛｯｸ
久野浄英(東京城南川崎)
森健太(福岡)
酒井裕樹(北海道高森道場)
塚本徳臣(世田谷塚本道場)
・Dﾌﾞﾛｯｸ
谷川光(西神奈川)
平山竜太郎(札幌東道場)
渡辺大士(福岡)
鈴木国博(厚木赤羽)
連載･大山倍達ﾌﾟﾗｲﾍﾞｰﾄ迷言集(7)
｢大山倍達正伝｣でも書いたように､総裁がﾒﾃﾞｨｱ向けに語った言葉はほとんどが｢建前論｣である｡総裁の著書を読んで､または話を聞いて｢成人君子的な言葉だな｣とか､単純に｢それは理想だけど…｣｢ﾎﾝﾏかいな?｣なんて些細な違和感を抱いた時は､｢総裁の本音は別なところにある!｣と思った方が正しい｡また､その本音にこそ大山倍達という傑出した人物の｢凄味｣が見えてくる｡
総裁が逝った1994年4月｡その約10ヵ月前の事である｡総裁は既に70歳を超えていた｡ある日､全日本空手道連盟に所属している空手流派の豊島区会員の会合が開かれた｡総裁は会員幹事のG流T氏からｵﾌﾞｻﾞｰﾊﾞｰとしての出席を依頼された｡T氏とは知らない仲ではなく､丁寧な誘いだった為､総裁は内弟子を1人従えて会合場所の某料亭に赴いた｡そこには6名の空手流派の長が顔を揃えていた｡ただ､その多くが｢先代｣が亡くなったり高齢で自由が利かないという事で｢2代目｣だった｡だいたい歳の頃､40代の働き盛りといった人達だった｡
酒席はくつろいだ雰囲気になった｡しかし酒を1滴も飲まない下戸の総裁はｳｰﾛﾝ茶をﾁﾋﾞﾘﾁﾋﾞﾘやりながら､退席する機会を伺っていた｡ｱﾙｺｰﾙの入った各師範は次第に気持ちも大きくなっていったのだろう｡最初は総裁の前で｢石｣のように固まっていた連中が､いつしか｢ｺﾝﾆｬｸ｣のようになり､総裁に対しても横柄な口を利くようになった｡極真に対する批判も出てきた｡しかし､相手にするのも馬鹿らしいと思った総裁は､それをきっかけに退席させてもらうと幹事のT氏に言った｡それを聞き付けた4人の｢2代目｣達は色をなして｢天下の大山が逃げるのか?｣と騒いだ｡既に廊下に出た総裁は体を戻し｢君達ね､私はもう70を超えた爺さんだ｡しかし空手も喧嘩もまだ君達には負けないよ｡逃げるのか､と言ったﾔﾂ､出てきなさい｣と言うや否や､彼ら4人は立ち上がり､総裁に詰め寄ろうとした｡総裁は廊下を背に､左右は障子で守りながら､拳を振り上げる4人をほとんど1発の正拳顔面突きで伸ばしてしまった｡
幹事のT氏も驚きはしたものの､明らかに喧嘩を売ったのは彼らであり､彼らに代わって総裁に詫びた｡しかし数日後､突然豊島区警察から総裁は呼び出しを受けた｡｢何事か?｣と思いつつも鷹揚に出向くと､先日の会合で総裁に｢鉄拳制裁｣を食らった4人が暴行･傷害で被害届けを出してきたという｡総裁は呆れながら事の事情を説明し､幹事のT氏を呼び出して詳しい状況説明をさせた｡元々総裁の懇意の警官は｢しかし空手家が4人もして殴られたと被害届けを出すのも情けないですね｣と笑いつつも､一応書類送検をし､総裁が治療費を払うという事で不起訴･和解になった…｡
以上の話は総裁は勿論､当時内弟子だったKと､会合の幹事を務めたT氏から聞いた｢事件｣の真相である｡この話はいつしか尾鰭がついて､あちこちで似たような､しかし事実とは異なる噂が広まっている｡事の真相はここで書いたのが全てである｡
後日談｡私は旧会館総裁室で何かのきっかけから例の事件の話を仕向けた｡総裁は顔を赤くして｢情けないよ｡仮にも一空手流派の長がだね､4人して私にKOされるんだからねえ､他人を馬鹿にするときは相手を選ばないといけないよ｣と言った｡私は少し皮肉混じりに､｢でも､総裁は日頃から『受けた恨みは忘れてしまえ｡受けた恩義は百倍にして返せ』とおっしゃっていたじゃないですか｡よほど我慢できなかったんですね｣と言った｡総裁は急に私に顔を近付けて小さな声で言った｡
｢君ね〜､誰が簡単に恨みを忘れられるものかね｡人前で喧嘩売られたら買うのが当然じゃないのよ｡本当の大山倍達の座右の銘はね､『受けた恨みは百倍にして返せ｡受けた恩義は人並みに返せ』たよ｡話してわからない馬鹿どもにはね､殴り倒してわからせるしかないのよ｡分かった〜?｣
ちなみに総裁に殴られ､警官に被害届けを出した4人の空手流派師範は今も大きな顔で､大きな看板を道場に出している｡しかし､彼らの名誉の為に､私は彼らの名前の公開は控えておく｡
総裁が逝った1994年4月｡その約10ヵ月前の事である｡総裁は既に70歳を超えていた｡ある日､全日本空手道連盟に所属している空手流派の豊島区会員の会合が開かれた｡総裁は会員幹事のG流T氏からｵﾌﾞｻﾞｰﾊﾞｰとしての出席を依頼された｡T氏とは知らない仲ではなく､丁寧な誘いだった為､総裁は内弟子を1人従えて会合場所の某料亭に赴いた｡そこには6名の空手流派の長が顔を揃えていた｡ただ､その多くが｢先代｣が亡くなったり高齢で自由が利かないという事で｢2代目｣だった｡だいたい歳の頃､40代の働き盛りといった人達だった｡
酒席はくつろいだ雰囲気になった｡しかし酒を1滴も飲まない下戸の総裁はｳｰﾛﾝ茶をﾁﾋﾞﾘﾁﾋﾞﾘやりながら､退席する機会を伺っていた｡ｱﾙｺｰﾙの入った各師範は次第に気持ちも大きくなっていったのだろう｡最初は総裁の前で｢石｣のように固まっていた連中が､いつしか｢ｺﾝﾆｬｸ｣のようになり､総裁に対しても横柄な口を利くようになった｡極真に対する批判も出てきた｡しかし､相手にするのも馬鹿らしいと思った総裁は､それをきっかけに退席させてもらうと幹事のT氏に言った｡それを聞き付けた4人の｢2代目｣達は色をなして｢天下の大山が逃げるのか?｣と騒いだ｡既に廊下に出た総裁は体を戻し｢君達ね､私はもう70を超えた爺さんだ｡しかし空手も喧嘩もまだ君達には負けないよ｡逃げるのか､と言ったﾔﾂ､出てきなさい｣と言うや否や､彼ら4人は立ち上がり､総裁に詰め寄ろうとした｡総裁は廊下を背に､左右は障子で守りながら､拳を振り上げる4人をほとんど1発の正拳顔面突きで伸ばしてしまった｡
幹事のT氏も驚きはしたものの､明らかに喧嘩を売ったのは彼らであり､彼らに代わって総裁に詫びた｡しかし数日後､突然豊島区警察から総裁は呼び出しを受けた｡｢何事か?｣と思いつつも鷹揚に出向くと､先日の会合で総裁に｢鉄拳制裁｣を食らった4人が暴行･傷害で被害届けを出してきたという｡総裁は呆れながら事の事情を説明し､幹事のT氏を呼び出して詳しい状況説明をさせた｡元々総裁の懇意の警官は｢しかし空手家が4人もして殴られたと被害届けを出すのも情けないですね｣と笑いつつも､一応書類送検をし､総裁が治療費を払うという事で不起訴･和解になった…｡
以上の話は総裁は勿論､当時内弟子だったKと､会合の幹事を務めたT氏から聞いた｢事件｣の真相である｡この話はいつしか尾鰭がついて､あちこちで似たような､しかし事実とは異なる噂が広まっている｡事の真相はここで書いたのが全てである｡
後日談｡私は旧会館総裁室で何かのきっかけから例の事件の話を仕向けた｡総裁は顔を赤くして｢情けないよ｡仮にも一空手流派の長がだね､4人して私にKOされるんだからねえ､他人を馬鹿にするときは相手を選ばないといけないよ｣と言った｡私は少し皮肉混じりに､｢でも､総裁は日頃から『受けた恨みは忘れてしまえ｡受けた恩義は百倍にして返せ』とおっしゃっていたじゃないですか｡よほど我慢できなかったんですね｣と言った｡総裁は急に私に顔を近付けて小さな声で言った｡
｢君ね〜､誰が簡単に恨みを忘れられるものかね｡人前で喧嘩売られたら買うのが当然じゃないのよ｡本当の大山倍達の座右の銘はね､『受けた恨みは百倍にして返せ｡受けた恩義は人並みに返せ』たよ｡話してわからない馬鹿どもにはね､殴り倒してわからせるしかないのよ｡分かった〜?｣
ちなみに総裁に殴られ､警官に被害届けを出した4人の空手流派師範は今も大きな顔で､大きな看板を道場に出している｡しかし､彼らの名誉の為に､私は彼らの名前の公開は控えておく｡
2006年10月20日
日記･正義なき力は暴力なり(06/10/20)
朝6時まで黒澤浩樹の奥さんと話していた｡ｼｬﾜｰを浴びて､長淵剛を聴いて就寝｡昼12時起床｡今日は慌ただしい｡
いずれ黒澤道場と新極真の問題は明らかにするが､夢現舎は夢現舎で別格の件(今後執筆予定の前取材も兼ねて)近々新極真には連絡しなくちゃいけないな…､と思いながら軽くｻｲｸﾙﾏｼﾝを漕ぐ｡ゆっくり入浴して出社準備を整え(といってもｼﾞｰﾝｽﾞにｱﾛﾊ)て1時20分に家をでる｡
ﾒﾄﾛﾎﾟﾘﾀﾝﾎﾃﾙﾛﾋﾞｰで｢もう一人の力道山｣の著者･ﾘｽﾝﾖﾙ氏と会う｡塚本と3人で和食の店で鰻重を食べる｡ﾘ氏は朝鮮学校でﾗｸﾞﾋﾞｰ部監督を務める朝鮮総連のﾒﾝﾊﾞｰでもある｡｢総連｣というと偏見を持つ人もいるだろうがﾘ氏はきわめて聡明で話の分かる紳士だ｡
会社の応接ｺｰﾅｰのｿﾌｧにくつろぎながら本題の力道山の話に入る｡ﾘ氏は力道山の本を執筆しているだけあって､また力道山が｢北｣出身者という事もあり､力道山の生涯についてのﾘ氏の知識はきわめて豊富だ｡私達は､まずは力道山を知る証言者から探さなくてはならない｡だが｢大山倍達正伝｣同様､みな生きていれば既に齢80を越える世代だ｡殆どの方々は他界しているとの事｡しかし生前の彼らから聞いたｲﾝﾀﾋﾞｭｰ記録もあり､なんらかの形でﾘ氏に協力をしてもらえる事になった｡また存命中の証言者についても紹介してくれるとの事｡話が一段落した私達に､ﾘ氏はおもむろに｢小島さんのﾌﾞﾛｸﾞを拝読すると､小島さんは政治家の靖国神社参拝賛成派のようですが…､理由は?｣と聞いてきた｡私は韓国･朝鮮･中国の方や在日ｺﾘｱﾝの方々と｢政治論議｣をする事を好まない｡得てして話は不毛のまま後味悪い結果しか残さないからだ｡しかし､誠意を持って聞かれた事には誠意で答えるのが筋である｡私は｢日本にはどんな極悪人でも亡くなれば仏として弔う風習がある｡決して死者に唾を吐き掛ける事はしない｡A級であろうがC級であろうが､戦勝国のみによって行われた極東軍事裁判が国際的違法であることは今や世界の常識であり､いかなる理由があろうが日本の為に命を捨てていった方々を弔うのは日本人として当然の意識｡それを政治的な駆け引きなどに利用する韓国･中国の政策は内政干渉でしかない｣と答えた｡するとﾘ氏は｢では､日本には太平洋戦争で中国や朝鮮を侵した事に罪があると思うか?｣と質問した｡
｢時代背景を考えなくてはならない｡今の尺度で当時を測る事は出来ない｡あくまで､あの世界的な帝国主義全盛時代において､米英中蘭によるABCD包囲陣によって挑発､経済封鎖されていた中､日本が戦う決断をせざるを得なかった事には一切の罪が無い｡仮にあるというなら帝国主義時代のｱﾒﾘｶ､ｲｷﾞﾘｽ､ｿ連､ﾌﾗﾝｽ…すべてにある｣
と私は答えた｡本来なら感情的対立になり兼ねない話題にも拘らずﾘ氏は最後まで私の主張を紳士的態度で耳を貸し､｢自分の考えとは異なるが､小島さんの言葉には一貫性がある｣と言ってくれた｡
ﾘさんが帰ると入れ代わりに小泉悦次が来社した｡｢正伝｣の中で触れた総裁のｱﾒﾘｶ遠征の検証に多大なる貢献をしてくれた人物だ｡だが小泉は私の学友であり､大昔は毎日のようにﾂﾙんでいた仲だ｡ｿﾌｧでの話も急にﾘﾗｯｸｽする｡小泉も含め､ｽﾀｯﾌ全員の弁当を買って来させて食事｡ｲﾝﾄﾞｶﾚｰの店のｶﾚｰ弁当はｽﾀｯﾌにも好評だ｡
小泉は日本でも1､2を争う｢ﾚﾄﾛﾌﾟﾛﾚｽ｣研究家だ｡なんとしても彼に本を書かせたい私はさっそく企画の話をした｡最終的に｢ｱﾒﾘｶﾝﾌﾟﾛﾚｽと日本ﾌﾟﾛﾚｽ黎明期の真実｣という事で話がきまる｡そしてやはり本題の力道山の話になる｡小泉は海外･国内含め全ての力道山の試合結果のﾃﾞｰﾀを有してる｡また一般には知らされていない逸話の知識も多く､また現在でも生前の力道山を知る数名の人物､さらには研究家を紹介､協力してくれる事を確約してくれた｡好物なﾋﾞｰﾙをｶﾞﾌﾞｶﾞﾌﾞ飲ませたのが功を博したか?
小泉が帰ったのが10時半｡それから盧山先生の書籍担当者を会議ｺｰﾅｰに呼び､私がまとめた構成､台割り､ｺﾝﾃを元に塚本が編集上での説明･講義をする｡その後､しばらく諸々の件について塚本と密談､否相談をしていると時間は11時をとっくに回っていた｡
ﾎﾞｸｼﾝｸﾞと柔道の掛け持ち稽古から会社に戻りﾊﾞｲﾄとして手伝いをしていた息子の大志も疲れた様子｡ﾀｸｼｰを秘書に呼ばせて帰宅の途につく｡途中､思い出して秘書に電話｡三瓶啓二に電話するよう命じた｡｢小島が緊急に話したいので､時間を指定して頂ければ小島から電話させますが｣と秘書は丁寧に話したという｡しかし三瓶はのっけから｢俺には小島には用はないから話すこともない｣と答えたという｡
｢もうかれこれ1年近く､小島から三瓶さんには幾度も電話をし､三瓶さんが電話に出た時は､いつでも会おう､一緒に食事しようとおっしゃっていたようではないですか?何故､態度が急変するのですか?小島が何か三瓶さんが気に障る事をしましたか?第1､用件かあるのは小島でして､三瓶さんが話す事はないというのは筋違いではありませんか?｣
秘書が言うと三瓶は居直ったように｢用事があるなら土曜から東京で大会があるから会場にこい｡役員控え室に支部長が顔揃えてるから､くる勇気があるならそこで話を聞いてやる｣と言ったという｡｢絶対に舐められない事｣を身上とする夢現舎の秘書は言った｡
｢三瓶さん､小島は昔の小島じゃありませんよ｡そうおっしゃるなら小島は堂々と大会会場の控え室でもどこにでも行くと言うと思いますよ｡ただｱﾅﾀは小島を呼び付けて､それも支部長連中が揃っている中に来いという｡それは筋も違うし､一種の脅しですね｡ならば小島は相応の準備をしてﾀﾏを揃えて伺いますよ｡他の支部長の方々の前でしっかりｹｼﾞﾒつけると思いますよ｡それでいいならそう伝えましょうか?小島はただ､緊急に電話でお話をさせてほしいと言ってるだけなんです｡それをおおごとにしてるのは三瓶さんですよ｡何故､小島からの電話1本出られないんですが｡かつて､男を売りにしていたのはｱﾅﾀですよね｣
三瓶はあくまでも小島と話す事を拒んで､急用が出来たと言って電話を切ったという｡秘書の報告を聞いた私はもう1度三瓶に電話するよう命じた｡｢理由は分からないが､三瓶さんは､たかがﾁﾝﾋﾟﾗの小島から1年以上逃げ回っている臆病者だと､そう小島は理解する｣と伝えろと言った｡
暫らくして秘書から連絡｡今度は奥さんが電話口に出てｵﾛｵﾛしながら｢三瓶はさっき寝ました｣と答えたという｡1度目の電話から3分も経っていないのだ｡
私はただ､新極真会の体制と意思決定規則を三瓶に聞きたかっただけだった｡それ以外の意図は全くなかった｡ましてや前記したように､以前私からの電話に出た三瓶は｢俺は今は何もｵﾏｴに一物はないよ｡近くﾒｼ食おう｣とまで言っている｡あの異常な三瓶の逃げ方はいったい何なんだろう｡
そんなこんなで家に着いたのが午前1時近く｡今度は黒澤さんの奥さんからﾒｰﾙ｡せめてｼｬﾜｰを浴びてからと思い､午前2時頃に私から電話する｡途中黒澤が帰宅し､電話を変わる｡疲れ切った私は黒澤さんとの会話中半分寝てしまったが､無理にﾀﾊﾞｺを吸って覚醒させ､5時過ぎまで雑談｡こうして20日(正確には21日)もﾗｽﾄは長渕剛の歌を聴きながらねました｡
いずれ黒澤道場と新極真の問題は明らかにするが､夢現舎は夢現舎で別格の件(今後執筆予定の前取材も兼ねて)近々新極真には連絡しなくちゃいけないな…､と思いながら軽くｻｲｸﾙﾏｼﾝを漕ぐ｡ゆっくり入浴して出社準備を整え(といってもｼﾞｰﾝｽﾞにｱﾛﾊ)て1時20分に家をでる｡
ﾒﾄﾛﾎﾟﾘﾀﾝﾎﾃﾙﾛﾋﾞｰで｢もう一人の力道山｣の著者･ﾘｽﾝﾖﾙ氏と会う｡塚本と3人で和食の店で鰻重を食べる｡ﾘ氏は朝鮮学校でﾗｸﾞﾋﾞｰ部監督を務める朝鮮総連のﾒﾝﾊﾞｰでもある｡｢総連｣というと偏見を持つ人もいるだろうがﾘ氏はきわめて聡明で話の分かる紳士だ｡
会社の応接ｺｰﾅｰのｿﾌｧにくつろぎながら本題の力道山の話に入る｡ﾘ氏は力道山の本を執筆しているだけあって､また力道山が｢北｣出身者という事もあり､力道山の生涯についてのﾘ氏の知識はきわめて豊富だ｡私達は､まずは力道山を知る証言者から探さなくてはならない｡だが｢大山倍達正伝｣同様､みな生きていれば既に齢80を越える世代だ｡殆どの方々は他界しているとの事｡しかし生前の彼らから聞いたｲﾝﾀﾋﾞｭｰ記録もあり､なんらかの形でﾘ氏に協力をしてもらえる事になった｡また存命中の証言者についても紹介してくれるとの事｡話が一段落した私達に､ﾘ氏はおもむろに｢小島さんのﾌﾞﾛｸﾞを拝読すると､小島さんは政治家の靖国神社参拝賛成派のようですが…､理由は?｣と聞いてきた｡私は韓国･朝鮮･中国の方や在日ｺﾘｱﾝの方々と｢政治論議｣をする事を好まない｡得てして話は不毛のまま後味悪い結果しか残さないからだ｡しかし､誠意を持って聞かれた事には誠意で答えるのが筋である｡私は｢日本にはどんな極悪人でも亡くなれば仏として弔う風習がある｡決して死者に唾を吐き掛ける事はしない｡A級であろうがC級であろうが､戦勝国のみによって行われた極東軍事裁判が国際的違法であることは今や世界の常識であり､いかなる理由があろうが日本の為に命を捨てていった方々を弔うのは日本人として当然の意識｡それを政治的な駆け引きなどに利用する韓国･中国の政策は内政干渉でしかない｣と答えた｡するとﾘ氏は｢では､日本には太平洋戦争で中国や朝鮮を侵した事に罪があると思うか?｣と質問した｡
｢時代背景を考えなくてはならない｡今の尺度で当時を測る事は出来ない｡あくまで､あの世界的な帝国主義全盛時代において､米英中蘭によるABCD包囲陣によって挑発､経済封鎖されていた中､日本が戦う決断をせざるを得なかった事には一切の罪が無い｡仮にあるというなら帝国主義時代のｱﾒﾘｶ､ｲｷﾞﾘｽ､ｿ連､ﾌﾗﾝｽ…すべてにある｣
と私は答えた｡本来なら感情的対立になり兼ねない話題にも拘らずﾘ氏は最後まで私の主張を紳士的態度で耳を貸し､｢自分の考えとは異なるが､小島さんの言葉には一貫性がある｣と言ってくれた｡
ﾘさんが帰ると入れ代わりに小泉悦次が来社した｡｢正伝｣の中で触れた総裁のｱﾒﾘｶ遠征の検証に多大なる貢献をしてくれた人物だ｡だが小泉は私の学友であり､大昔は毎日のようにﾂﾙんでいた仲だ｡ｿﾌｧでの話も急にﾘﾗｯｸｽする｡小泉も含め､ｽﾀｯﾌ全員の弁当を買って来させて食事｡ｲﾝﾄﾞｶﾚｰの店のｶﾚｰ弁当はｽﾀｯﾌにも好評だ｡
小泉は日本でも1､2を争う｢ﾚﾄﾛﾌﾟﾛﾚｽ｣研究家だ｡なんとしても彼に本を書かせたい私はさっそく企画の話をした｡最終的に｢ｱﾒﾘｶﾝﾌﾟﾛﾚｽと日本ﾌﾟﾛﾚｽ黎明期の真実｣という事で話がきまる｡そしてやはり本題の力道山の話になる｡小泉は海外･国内含め全ての力道山の試合結果のﾃﾞｰﾀを有してる｡また一般には知らされていない逸話の知識も多く､また現在でも生前の力道山を知る数名の人物､さらには研究家を紹介､協力してくれる事を確約してくれた｡好物なﾋﾞｰﾙをｶﾞﾌﾞｶﾞﾌﾞ飲ませたのが功を博したか?
小泉が帰ったのが10時半｡それから盧山先生の書籍担当者を会議ｺｰﾅｰに呼び､私がまとめた構成､台割り､ｺﾝﾃを元に塚本が編集上での説明･講義をする｡その後､しばらく諸々の件について塚本と密談､否相談をしていると時間は11時をとっくに回っていた｡
ﾎﾞｸｼﾝｸﾞと柔道の掛け持ち稽古から会社に戻りﾊﾞｲﾄとして手伝いをしていた息子の大志も疲れた様子｡ﾀｸｼｰを秘書に呼ばせて帰宅の途につく｡途中､思い出して秘書に電話｡三瓶啓二に電話するよう命じた｡｢小島が緊急に話したいので､時間を指定して頂ければ小島から電話させますが｣と秘書は丁寧に話したという｡しかし三瓶はのっけから｢俺には小島には用はないから話すこともない｣と答えたという｡
｢もうかれこれ1年近く､小島から三瓶さんには幾度も電話をし､三瓶さんが電話に出た時は､いつでも会おう､一緒に食事しようとおっしゃっていたようではないですか?何故､態度が急変するのですか?小島が何か三瓶さんが気に障る事をしましたか?第1､用件かあるのは小島でして､三瓶さんが話す事はないというのは筋違いではありませんか?｣
秘書が言うと三瓶は居直ったように｢用事があるなら土曜から東京で大会があるから会場にこい｡役員控え室に支部長が顔揃えてるから､くる勇気があるならそこで話を聞いてやる｣と言ったという｡｢絶対に舐められない事｣を身上とする夢現舎の秘書は言った｡
｢三瓶さん､小島は昔の小島じゃありませんよ｡そうおっしゃるなら小島は堂々と大会会場の控え室でもどこにでも行くと言うと思いますよ｡ただｱﾅﾀは小島を呼び付けて､それも支部長連中が揃っている中に来いという｡それは筋も違うし､一種の脅しですね｡ならば小島は相応の準備をしてﾀﾏを揃えて伺いますよ｡他の支部長の方々の前でしっかりｹｼﾞﾒつけると思いますよ｡それでいいならそう伝えましょうか?小島はただ､緊急に電話でお話をさせてほしいと言ってるだけなんです｡それをおおごとにしてるのは三瓶さんですよ｡何故､小島からの電話1本出られないんですが｡かつて､男を売りにしていたのはｱﾅﾀですよね｣
三瓶はあくまでも小島と話す事を拒んで､急用が出来たと言って電話を切ったという｡秘書の報告を聞いた私はもう1度三瓶に電話するよう命じた｡｢理由は分からないが､三瓶さんは､たかがﾁﾝﾋﾟﾗの小島から1年以上逃げ回っている臆病者だと､そう小島は理解する｣と伝えろと言った｡
暫らくして秘書から連絡｡今度は奥さんが電話口に出てｵﾛｵﾛしながら｢三瓶はさっき寝ました｣と答えたという｡1度目の電話から3分も経っていないのだ｡
私はただ､新極真会の体制と意思決定規則を三瓶に聞きたかっただけだった｡それ以外の意図は全くなかった｡ましてや前記したように､以前私からの電話に出た三瓶は｢俺は今は何もｵﾏｴに一物はないよ｡近くﾒｼ食おう｣とまで言っている｡あの異常な三瓶の逃げ方はいったい何なんだろう｡
そんなこんなで家に着いたのが午前1時近く｡今度は黒澤さんの奥さんからﾒｰﾙ｡せめてｼｬﾜｰを浴びてからと思い､午前2時頃に私から電話する｡途中黒澤が帰宅し､電話を変わる｡疲れ切った私は黒澤さんとの会話中半分寝てしまったが､無理にﾀﾊﾞｺを吸って覚醒させ､5時過ぎまで雑談｡こうして20日(正確には21日)もﾗｽﾄは長渕剛の歌を聴きながらねました｡
2006年10月18日
日記･正義なき力は暴力なり(06/10/17)
会社を塚本に任せ､隠居同然の日々を送る小島ではあるが､時には｢日記｣でも書いて私の実は情けないﾌﾟﾗｲﾍﾞｰﾄの日々を紹介してみようと思う｡いつも物書き面して能書きたれてる小島の｢虚像｣ではない俗物の｢実像｣を見て笑ってもらえれば幸いだ｡
先日のﾄﾚｰﾆﾝｸﾞのﾀﾞﾒｰｼﾞに歩く事さえﾍﾅﾍﾅ状態の私｡特にﾌｸﾗﾊｷﾞがこんなに痛くなったのは何年ぶりか?
相変わらず昼夜逆転の毎日で､今朝も寝たのが7時｡息子を学校に送り出してから睡眠導入剤を飲んで､iPODで長淵剛の歌を聴きながら眠りについた｡
12時半､無理に起きるがまだ体が痛く怠い｡息子にもらったﾊﾟﾝﾁの影響で左頬がﾏﾋ状態｡思い切ってｻｲｸﾙﾏｼﾝにまたがり､今度は矢沢永吉さんの歌をｲﾔﾎﾝで聴きながらゆっくり30分､ﾍﾟﾀﾞﾙを漕ぐ｡腕立て､ﾋﾝｽﾞｰｽｸﾜｯﾄ､腹筋､背筋を2ｾｯﾄやってｼｬﾜｰを浴び､ﾍﾞｯﾄﾞに横たわるとｺﾐｭﾆｹｰｼｮﾝBOXへのｺﾒﾝﾄを知らせる着ﾒﾛが…｡常連で人一倍正義感に溢れる｢ｹﾝｶ10級｣さんから緊急情報｡｢ﾅｯｸﾙｽﾞ｣とかいうｴﾛ系雑誌に総裁の記事が掲載され､｢正伝｣からの引用文が沢山載ってるとの事｡即､｢ｹﾝｶ10級｣さんに詳細を質問｡同時に会社に連絡し､秘書に｢ﾅｯｸﾙｽﾞ｣の記事の確認を依頼｡すると､やはりｺﾐｭﾆｹｰｼｮﾝBOXの常連｢川越住人｣さんから電話｡｢ｹﾝｶ10級｣さんのｺﾒﾝﾄを見て心配で電話してくれたとの事｡丁度その最中､秘書からﾒｰﾙで｢ﾅｯｸﾙｽﾞの記事は正伝の名前を出して総体的には好意的に書いてくれている｣との報告を受ける｡｢川越住人｣さんに事の詳細を話して電話を切り､ｺﾐｭﾆｹｰｼｮﾝBOXで｢ｹﾝｶ10級｣さんにもｺﾒﾝﾄを入れる｡
また会社に電話｡秘書は｢ﾅｯｸﾙｽﾞを調べるついでに週刊朝日を見たら正伝の書評が1ﾍﾟｰｼﾞで絶賛してた｣との報告｡私はすぐに塚本に｢ﾅｯｸﾙｽﾞ｣と｢週刊朝日｣の報告をしながら会社の幾つかのﾄﾗﾌﾞﾙについて相談｡ついつい雑談もしていると､また秘書から電話｡12月初旬に広島の田原敬三さんのお墓参りと松山の芦原会館で英典館長と会う(芦原先生のお墓参りも兼ねて)ｽｹｼﾞｭｰﾙについての確認｡ﾒｼを食べる暇もない｡
一段落して長崎ﾁｬﾝﾎﾟﾝの出前を取り､また塚本と打ち合せ｡あっという間に夕方だ｡ﾍﾞｯﾄﾞに腹ばいになったまま盧山先生の｢技術本｣の構成ﾗﾌに取り掛かる｡気が付くともう6時だ｡
現在､顧問弁護士を代理人として某出版社と争っている｡私が夢現舎を設立して18年､初めて経験する程酷いﾔｸｻﾞ商法でｳﾁを脅してきたｱﾎﾟﾛｺﾐｭﾆｹｰｼｮﾝｽﾞという新興出版社｡裁判を想定して徹底的に争う決意だ｡その件で塚本とまた打ち合せ｡途中､黒澤浩樹の奥さんから電話｡黒澤さんが激怒する程のﾄﾗﾌﾞﾙが起きたので､夜にでも相談したいとの事｡しかし､奥さん自身が怒る､怒る｡私は強い女性が好きなので､黒澤さんを身を挺して守ろうという奥さんに改めて感激｡電話を切ると､今度は｢もう一人の力道山｣の著者で作家のﾘｽﾝﾖﾙさんから電話｡今週木曜に会う約束をする｡そして再び塚本と打ち合せ｡ついでに黒澤さんとﾘｽﾝﾖﾙさんの報告をする｡裁判関係は塚本に任せる事で話に区切りをつけて､また盧山先生の本の仕事にかかる｡途中､思いついて盧山道場に電話｡今度は会社のｽﾀｯﾌに頼んでいた新しいPC購入についての報告が､担当ｽﾀｯﾌから連絡｡
8時過ぎ､息子が講道館の稽古を終えて帰宅｡夕食はﾁｷﾝｶﾚｰ｡入浴後､ﾚﾝﾀﾙ店から借りてきたｱﾒﾘｶの傑作TVﾄﾞﾗﾏ｢ﾌﾟﾘｽﾞﾝﾌﾞﾚｲｸ｣を観るが私は開始早々高鼾…｡そのまま寝てﾊｯと起きると午前1時半｡黒澤さんにﾒｰﾙ｡その後､電話｡例のﾄﾗﾌﾞﾙの件｡内容は省くが､これは私個人の感想｡｢新極真会もどうしょうもないな｡組織崩壊は松井派よりも早いかも｣｡いつものように黒澤さんと長話しをしていたら朝の6時｡電話を切ると､息子は既に起きてﾗﾝﾆﾝｸﾞから帰って登校準備｡そして息子を学校に見送って…こうして日記を書いている訳です｡
相変わらず体が痛い｡頭も痛くなってきた｡おやすみなさい｡
先日のﾄﾚｰﾆﾝｸﾞのﾀﾞﾒｰｼﾞに歩く事さえﾍﾅﾍﾅ状態の私｡特にﾌｸﾗﾊｷﾞがこんなに痛くなったのは何年ぶりか?
相変わらず昼夜逆転の毎日で､今朝も寝たのが7時｡息子を学校に送り出してから睡眠導入剤を飲んで､iPODで長淵剛の歌を聴きながら眠りについた｡
12時半､無理に起きるがまだ体が痛く怠い｡息子にもらったﾊﾟﾝﾁの影響で左頬がﾏﾋ状態｡思い切ってｻｲｸﾙﾏｼﾝにまたがり､今度は矢沢永吉さんの歌をｲﾔﾎﾝで聴きながらゆっくり30分､ﾍﾟﾀﾞﾙを漕ぐ｡腕立て､ﾋﾝｽﾞｰｽｸﾜｯﾄ､腹筋､背筋を2ｾｯﾄやってｼｬﾜｰを浴び､ﾍﾞｯﾄﾞに横たわるとｺﾐｭﾆｹｰｼｮﾝBOXへのｺﾒﾝﾄを知らせる着ﾒﾛが…｡常連で人一倍正義感に溢れる｢ｹﾝｶ10級｣さんから緊急情報｡｢ﾅｯｸﾙｽﾞ｣とかいうｴﾛ系雑誌に総裁の記事が掲載され､｢正伝｣からの引用文が沢山載ってるとの事｡即､｢ｹﾝｶ10級｣さんに詳細を質問｡同時に会社に連絡し､秘書に｢ﾅｯｸﾙｽﾞ｣の記事の確認を依頼｡すると､やはりｺﾐｭﾆｹｰｼｮﾝBOXの常連｢川越住人｣さんから電話｡｢ｹﾝｶ10級｣さんのｺﾒﾝﾄを見て心配で電話してくれたとの事｡丁度その最中､秘書からﾒｰﾙで｢ﾅｯｸﾙｽﾞの記事は正伝の名前を出して総体的には好意的に書いてくれている｣との報告を受ける｡｢川越住人｣さんに事の詳細を話して電話を切り､ｺﾐｭﾆｹｰｼｮﾝBOXで｢ｹﾝｶ10級｣さんにもｺﾒﾝﾄを入れる｡
また会社に電話｡秘書は｢ﾅｯｸﾙｽﾞを調べるついでに週刊朝日を見たら正伝の書評が1ﾍﾟｰｼﾞで絶賛してた｣との報告｡私はすぐに塚本に｢ﾅｯｸﾙｽﾞ｣と｢週刊朝日｣の報告をしながら会社の幾つかのﾄﾗﾌﾞﾙについて相談｡ついつい雑談もしていると､また秘書から電話｡12月初旬に広島の田原敬三さんのお墓参りと松山の芦原会館で英典館長と会う(芦原先生のお墓参りも兼ねて)ｽｹｼﾞｭｰﾙについての確認｡ﾒｼを食べる暇もない｡
一段落して長崎ﾁｬﾝﾎﾟﾝの出前を取り､また塚本と打ち合せ｡あっという間に夕方だ｡ﾍﾞｯﾄﾞに腹ばいになったまま盧山先生の｢技術本｣の構成ﾗﾌに取り掛かる｡気が付くともう6時だ｡
現在､顧問弁護士を代理人として某出版社と争っている｡私が夢現舎を設立して18年､初めて経験する程酷いﾔｸｻﾞ商法でｳﾁを脅してきたｱﾎﾟﾛｺﾐｭﾆｹｰｼｮﾝｽﾞという新興出版社｡裁判を想定して徹底的に争う決意だ｡その件で塚本とまた打ち合せ｡途中､黒澤浩樹の奥さんから電話｡黒澤さんが激怒する程のﾄﾗﾌﾞﾙが起きたので､夜にでも相談したいとの事｡しかし､奥さん自身が怒る､怒る｡私は強い女性が好きなので､黒澤さんを身を挺して守ろうという奥さんに改めて感激｡電話を切ると､今度は｢もう一人の力道山｣の著者で作家のﾘｽﾝﾖﾙさんから電話｡今週木曜に会う約束をする｡そして再び塚本と打ち合せ｡ついでに黒澤さんとﾘｽﾝﾖﾙさんの報告をする｡裁判関係は塚本に任せる事で話に区切りをつけて､また盧山先生の本の仕事にかかる｡途中､思いついて盧山道場に電話｡今度は会社のｽﾀｯﾌに頼んでいた新しいPC購入についての報告が､担当ｽﾀｯﾌから連絡｡
8時過ぎ､息子が講道館の稽古を終えて帰宅｡夕食はﾁｷﾝｶﾚｰ｡入浴後､ﾚﾝﾀﾙ店から借りてきたｱﾒﾘｶの傑作TVﾄﾞﾗﾏ｢ﾌﾟﾘｽﾞﾝﾌﾞﾚｲｸ｣を観るが私は開始早々高鼾…｡そのまま寝てﾊｯと起きると午前1時半｡黒澤さんにﾒｰﾙ｡その後､電話｡例のﾄﾗﾌﾞﾙの件｡内容は省くが､これは私個人の感想｡｢新極真会もどうしょうもないな｡組織崩壊は松井派よりも早いかも｣｡いつものように黒澤さんと長話しをしていたら朝の6時｡電話を切ると､息子は既に起きてﾗﾝﾆﾝｸﾞから帰って登校準備｡そして息子を学校に見送って…こうして日記を書いている訳です｡
相変わらず体が痛い｡頭も痛くなってきた｡おやすみなさい｡
2006年10月15日
挫折､挫折のﾄﾚｰﾆﾝｸﾞ日誌
久々のﾄﾚｰﾆﾝｸﾞだった｡
7月半ばに｢大山倍達正伝｣の執筆から離れ､暫らくはｴﾈﾙｷﾞｰの蓄えが残っていた私は､真夏の昼下がり､殺人的な太陽の下でも平気でﾙｰﾌﾊﾞﾙｺﾆｰで水を頭から被りながらｳｪｲﾄﾄﾚｰﾆﾝｸﾞや稽古に没頭していた｡さすがに8月半ばにはﾄﾚｰﾆﾝｸﾞをｳｪｲﾄから水泳にﾁｪﾝｼﾞ｡週3回､連続2ｷﾛを泳ぐ事を日課にした｡
ところが8月末､休暇を取って沖縄で過ごした2週間で一気に｢正伝｣執筆に費やした2年間の疲れがﾄﾞｯと噴出した｡9月一杯､私は毎日を殆ど寝て過ごした｡
ﾊﾟｰﾄﾅｰの塚本佳子は｢正伝｣の完成後､｢もう本は書かない｣｢何にもする気が起きない｣と弱音を吐いていた癖に､8月早々から現場に復帰し､恐怖の土方歳三振りを発揮｡｢正伝｣が多くの媒体で紹介され､売れ行き好調のﾆｭｰｽが飛び込む度に塚本は元気になっていった｡口では｢仕事として書いただけだから…｣などと憎たらしい事を言いながらも､ｱﾏﾉｼﾞｬｸの塚本は､｢正伝｣執筆の経験が直接的に｢ｴﾈﾙｷﾞｰ源｣になったようだ｡
だが私はﾀﾞﾒだった｡まるで毎日が｢風邪｣引き状態｡ﾄﾚｰﾆﾝｸﾞどころか､1日中ﾍﾞｯﾄﾞに横になったままの生活が1ヵ月続いた｡週に1度の出社の日は､帰宅後ｸﾞｯﾀﾘと食欲もなく､ただひたすら寝るのみ…｡
｢これじゃまずい｣
さすがに私も焦りだした｡もう｢正伝｣執筆の疲れなどとは言ってられない｡息子は反対に2学期から講道館の他にﾎﾞｸｼﾝｸﾞｼﾞﾑに通い始めた｡黒澤浩樹のｱﾄﾞﾊﾞｲｽを受けながら､週に4回のﾎﾞｸｼﾝｸﾞ､2回の柔道(選手ｸﾗｽ)､そして日曜日は1人でｳｪｲﾄﾄﾚｰﾆﾝｸﾞを行っていた｡もう言い訳は出来ないと観念した私は､今日思い切って息子とﾄﾚｰﾆﾝｸﾞを再開する事にした｡
現在､私の住むﾏﾝｼｮﾝは改装中でﾊﾞｰﾍﾞﾙ類が使えない｡仕方なく私達は空手中心のﾄﾚｰﾆﾝｸﾞに切り替えた｡以下が今日の私のﾒﾆｭｰだ｡ちなみに息子は何もかも私の倍から3倍の量をこなした｡
●ｽﾄﾚｯﾁ
●腹筋&背筋/50×3
●腕立て/50×3
●ﾋﾝｽﾞｰｽｸﾜｯﾄ/100×2
●ｶｰﾌﾚｲｽﾞ/100×1
●1階から6階までの階段ﾀﾞｯｼｭ5往復…目標達成前に脱落して4往復でｷﾞﾌﾞｱｯﾌﾟ｡息子は悠々と10往復完遂｡
●ﾛｰﾌﾟｽｷｯﾋﾟﾝｸﾞ/1分×3…現役時代､得意だった縄跳びがこんなに辛いなんて｡息子はｼﾞﾑで､まず10分跳び続け､更に3分3ｾｯﾄやっているという｡やっぱりﾎﾞｸｼﾝｸﾞは凄い｡
●ｼｬﾄﾞｳ/1分×3
●受け返し/各2分×5
●ｽﾊﾟｰﾘﾝｸﾞ(極真ﾙｰﾙ)/1分×4
●ﾏｽﾎﾞｸｼﾝｸﾞ/1分×3
●顔面殴打ありｽﾊﾟｰﾘﾝｸﾞ/1分×2
●約2ｷﾛのﾗﾝﾆﾝｸﾞ
ｳｪｲﾄﾄﾚｰﾆﾝｸﾞが出来ない事が残念だが…ﾄﾚｰﾆﾝｸﾞ後､私は1時間近く微動だに出来ず｢死んでました｣｡もう体はﾎﾞﾛﾎﾞﾛ､でも気分は爽快!ｽﾊﾟｰﾘﾝｸﾞではもはや息子には勝てません｡しかし､相変わらず左の上段回し蹴りは実戦でも使えそう｡中段後ろ蹴りも何とか正確に蹴る事が出来た｡それだけで満足だった｡
今後は息子に学びながら顔面殴打に磨きをかけたいと願いつつ､顔面殴打ありｽﾊﾟｰﾘﾝｸﾞでﾊﾟﾝﾁﾝｸﾞｸﾞﾛｰﾌﾞでもらった息子の左ｽﾄﾚｰﾄは全く見えず､痛かった｡もし､これで投げとｸﾞﾗｳﾝﾄﾞがあったら私は息子に落とされていたに違いない｡黒澤浩樹を｢兄｣と慕う息子は､今最高のﾓﾁﾍﾞｰｼｮﾝで格闘技に打ち込んでいる｡それにしても､ﾛｰﾌﾟｽｷｯﾋﾟﾝｸﾞはｷﾂかった｡これからもﾛｰﾌﾟｽｷｯﾋﾟﾝｸﾞはﾄﾚｰﾆﾝｸﾞに加えるつもりだ｡
とりあえず､今日､私は｢復活｣したのだ｡
7月半ばに｢大山倍達正伝｣の執筆から離れ､暫らくはｴﾈﾙｷﾞｰの蓄えが残っていた私は､真夏の昼下がり､殺人的な太陽の下でも平気でﾙｰﾌﾊﾞﾙｺﾆｰで水を頭から被りながらｳｪｲﾄﾄﾚｰﾆﾝｸﾞや稽古に没頭していた｡さすがに8月半ばにはﾄﾚｰﾆﾝｸﾞをｳｪｲﾄから水泳にﾁｪﾝｼﾞ｡週3回､連続2ｷﾛを泳ぐ事を日課にした｡
ところが8月末､休暇を取って沖縄で過ごした2週間で一気に｢正伝｣執筆に費やした2年間の疲れがﾄﾞｯと噴出した｡9月一杯､私は毎日を殆ど寝て過ごした｡
ﾊﾟｰﾄﾅｰの塚本佳子は｢正伝｣の完成後､｢もう本は書かない｣｢何にもする気が起きない｣と弱音を吐いていた癖に､8月早々から現場に復帰し､恐怖の土方歳三振りを発揮｡｢正伝｣が多くの媒体で紹介され､売れ行き好調のﾆｭｰｽが飛び込む度に塚本は元気になっていった｡口では｢仕事として書いただけだから…｣などと憎たらしい事を言いながらも､ｱﾏﾉｼﾞｬｸの塚本は､｢正伝｣執筆の経験が直接的に｢ｴﾈﾙｷﾞｰ源｣になったようだ｡
だが私はﾀﾞﾒだった｡まるで毎日が｢風邪｣引き状態｡ﾄﾚｰﾆﾝｸﾞどころか､1日中ﾍﾞｯﾄﾞに横になったままの生活が1ヵ月続いた｡週に1度の出社の日は､帰宅後ｸﾞｯﾀﾘと食欲もなく､ただひたすら寝るのみ…｡
｢これじゃまずい｣
さすがに私も焦りだした｡もう｢正伝｣執筆の疲れなどとは言ってられない｡息子は反対に2学期から講道館の他にﾎﾞｸｼﾝｸﾞｼﾞﾑに通い始めた｡黒澤浩樹のｱﾄﾞﾊﾞｲｽを受けながら､週に4回のﾎﾞｸｼﾝｸﾞ､2回の柔道(選手ｸﾗｽ)､そして日曜日は1人でｳｪｲﾄﾄﾚｰﾆﾝｸﾞを行っていた｡もう言い訳は出来ないと観念した私は､今日思い切って息子とﾄﾚｰﾆﾝｸﾞを再開する事にした｡
現在､私の住むﾏﾝｼｮﾝは改装中でﾊﾞｰﾍﾞﾙ類が使えない｡仕方なく私達は空手中心のﾄﾚｰﾆﾝｸﾞに切り替えた｡以下が今日の私のﾒﾆｭｰだ｡ちなみに息子は何もかも私の倍から3倍の量をこなした｡
●ｽﾄﾚｯﾁ
●腹筋&背筋/50×3
●腕立て/50×3
●ﾋﾝｽﾞｰｽｸﾜｯﾄ/100×2
●ｶｰﾌﾚｲｽﾞ/100×1
●1階から6階までの階段ﾀﾞｯｼｭ5往復…目標達成前に脱落して4往復でｷﾞﾌﾞｱｯﾌﾟ｡息子は悠々と10往復完遂｡
●ﾛｰﾌﾟｽｷｯﾋﾟﾝｸﾞ/1分×3…現役時代､得意だった縄跳びがこんなに辛いなんて｡息子はｼﾞﾑで､まず10分跳び続け､更に3分3ｾｯﾄやっているという｡やっぱりﾎﾞｸｼﾝｸﾞは凄い｡
●ｼｬﾄﾞｳ/1分×3
●受け返し/各2分×5
●ｽﾊﾟｰﾘﾝｸﾞ(極真ﾙｰﾙ)/1分×4
●ﾏｽﾎﾞｸｼﾝｸﾞ/1分×3
●顔面殴打ありｽﾊﾟｰﾘﾝｸﾞ/1分×2
●約2ｷﾛのﾗﾝﾆﾝｸﾞ
ｳｪｲﾄﾄﾚｰﾆﾝｸﾞが出来ない事が残念だが…ﾄﾚｰﾆﾝｸﾞ後､私は1時間近く微動だに出来ず｢死んでました｣｡もう体はﾎﾞﾛﾎﾞﾛ､でも気分は爽快!ｽﾊﾟｰﾘﾝｸﾞではもはや息子には勝てません｡しかし､相変わらず左の上段回し蹴りは実戦でも使えそう｡中段後ろ蹴りも何とか正確に蹴る事が出来た｡それだけで満足だった｡
今後は息子に学びながら顔面殴打に磨きをかけたいと願いつつ､顔面殴打ありｽﾊﾟｰﾘﾝｸﾞでﾊﾟﾝﾁﾝｸﾞｸﾞﾛｰﾌﾞでもらった息子の左ｽﾄﾚｰﾄは全く見えず､痛かった｡もし､これで投げとｸﾞﾗｳﾝﾄﾞがあったら私は息子に落とされていたに違いない｡黒澤浩樹を｢兄｣と慕う息子は､今最高のﾓﾁﾍﾞｰｼｮﾝで格闘技に打ち込んでいる｡それにしても､ﾛｰﾌﾟｽｷｯﾋﾟﾝｸﾞはｷﾂかった｡これからもﾛｰﾌﾟｽｷｯﾋﾟﾝｸﾞはﾄﾚｰﾆﾝｸﾞに加えるつもりだ｡
とりあえず､今日､私は｢復活｣したのだ｡
2006年10月14日
盧山初雄と黒澤浩樹に想う
周知の通り､大山総裁か逝ってすでに12年が経つ｡この間､極真会館は分裂に次ぐ分裂を繰り返してきた｡松井派は勿論､新極真会もみな｢大山倍達の遺志の継承｣を唱え､大義名分を掲げてきた｡それは｢極真｣の名前を外した西田幸夫の清武会も､黒澤浩樹の黒澤道場も変わりはない｡
だが一方で､これらの分裂騒動が多分に政治色の強い権力闘争の意味合いが濃い事も否定出来ない｡例えば極真連合会が好例だ｡連合会の成立は｢反松井｣の大同団結を掲げながらも､その実体は松井章圭との裁判闘争が真の目的だった事は否めない｡事実､連合会に所属する複数の支部長(道場経営者)達がそのように証言している｡つまり連合会という組織は｢裁判闘争｣の為にのみ存在意義がある訳であり､そこには｢会員｣｢道場生｣達の存在は完全に無視されている｡これは連合会だけではなく松井派も新極真会も､極真館も例外ではない｡
同様に芦原会館も芦原先生の死後､分裂を繰り返し､今や組織的に危機的状況にある｡そこには極真会館同様､大義名分とともに打算や権力闘争が渦巻いている事は否定出来ない｡
極真空手にせよ､芦原空手にせよ､これらの分裂騒動の最大の犠牲者が道場生である事は疑いない現実である｡極真空手を愛しながらも､上層部による権力闘争の犠牲となり､中には極真空手に見切りをつけざるを得ない道場生は決して少なくない｡
…いったい自分達は誰を信じればいいのか?どの団体がまともで､まともではないのか?
苦悩の日々を送る道場生が如何に多い事か｡
先日､私は､ある用事で盧山初雄に連絡を取った｡噂では聞いていたが､実際に盧山は毎日欠かすことなく1回に2時間以上の稽古をしているという｡毎日朝､それは雨の日も雪の日も､木々に囲まれた自然の中で｢立禅｣を行い､立ち木に突き蹴りを放ち､同士と供に組手を行う｡盧山は｢自然の中で自然と一体になりながら自分の弱さと対峙して稽古する事が大切だ｣といい､稽古に臨んでは一瞬の緩みもなく精魂を込めて体を動かす…そんな姿を私は目の当たりにした｡
そして今日､私が盧山の携帯に電話をした時､ちょうどこれからｳｫｰﾐﾝｸﾞに入るところだったようで､いつものひょうきんな盧山はそこにいなかった｡電話越しに張り詰めた緊張感が伝わってきた｡極真館の関係者によれば､海外主張の時でさえ､盧山は稽古を欠かさないという｡齢60に近い盧山にとって毎日の稽古は決して楽なものではないだろう｡それでも常に空手着に身を包み､夏も冬も稽古を一切怠らない盧山は､だから常に堂々と｢武道空手｣を主張し､鋭い眼光ながら寛容に溢れた笑顔を振りまく事が出来るのだ｡｢私には結局､空手しかないから…｡稽古だけは生涯続ける｡それしか大山総裁の魂を受け継ぐ方法は自分には見つからない｣そう言いながら笑う盧山｡これこそが日々の稽古の継続による自信の表れに違いない｡
黒澤浩樹も同様だ｡黒澤が突然のように全日本選手権の舞台に現われ､並み居る強豪を得意の下段蹴りで沈めて優勝を手にしたのは1984年､すでに20年以上も前の事である｡実力No1と言われ､｢最強の格闘機械｣と呼ばれた黒澤は幾度の苦難を乗り越え､｢冬の時代｣を乗り越えて再び極真空手の前線に返り咲いた｡そんな時､大山総裁が逝った｡律儀な黒澤は迷う事なく松井2代目館長をたて､そのまま選手としての戦いに挑んだ｡黒澤が目指したのは常にﾄｯﾌﾟの座だった｡多くの同士や戦友が戦列から離れていく中､黒澤は更に自らを追込み､極真会館を離れ､ﾌﾟﾗｲﾄﾞ､Kｰ1という未知の世界に飛び込んでいった｡
私には､全身ﾎﾞﾛﾎﾞﾛになりながら､そこまでして戦う場を求め続ける黒澤が痛ましく､また理解出来なかった｡私は次第に黒澤と疎遠になっていった｡そして今年の夏､私は黒澤と｢再会｣した｡しかし黒澤は10年前と変わっていなかった｡否､人間として､また武道家として一回りも二回りも成長したのは事実だが､それは黒澤が昔と変わらず毎日､極限まで自分を追込みながら稽古を続けてきたからこその姿だった｡
私の相棒である塚本佳子は言った｡
｢空手家の本分は空手の稽古に励む事｡それを何十年もたゆまず続けているというだけで､私は盧山先生と黒澤さんを信じる｣
組織論､正統権､経営術は確かに大切だ｡しかし武道家は如何に汗を流し､鍛練を続けるか?これこそが何よりも重要な事ではないか?空手着よりもｽｰﾂが似合い､道場よりも銀座や六本木のｸﾗﾌﾞが似合うような空手家は真の武道家ではない｡空手着を纏わず汗も流さず､やれ組織だ､裁判だ､銭だ云々を激論するだけの人間は武道家の姿ではない｡
塚本の言葉こそが至言ではないか?私はその意味で､真っ白な空手着を毎日欠かさず身に纏い､稽古を忘れない盧山初雄と黒澤浩樹こそが､真の武道家･空手家の姿だと断言したい｡
だが一方で､これらの分裂騒動が多分に政治色の強い権力闘争の意味合いが濃い事も否定出来ない｡例えば極真連合会が好例だ｡連合会の成立は｢反松井｣の大同団結を掲げながらも､その実体は松井章圭との裁判闘争が真の目的だった事は否めない｡事実､連合会に所属する複数の支部長(道場経営者)達がそのように証言している｡つまり連合会という組織は｢裁判闘争｣の為にのみ存在意義がある訳であり､そこには｢会員｣｢道場生｣達の存在は完全に無視されている｡これは連合会だけではなく松井派も新極真会も､極真館も例外ではない｡
同様に芦原会館も芦原先生の死後､分裂を繰り返し､今や組織的に危機的状況にある｡そこには極真会館同様､大義名分とともに打算や権力闘争が渦巻いている事は否定出来ない｡
極真空手にせよ､芦原空手にせよ､これらの分裂騒動の最大の犠牲者が道場生である事は疑いない現実である｡極真空手を愛しながらも､上層部による権力闘争の犠牲となり､中には極真空手に見切りをつけざるを得ない道場生は決して少なくない｡
…いったい自分達は誰を信じればいいのか?どの団体がまともで､まともではないのか?
苦悩の日々を送る道場生が如何に多い事か｡
先日､私は､ある用事で盧山初雄に連絡を取った｡噂では聞いていたが､実際に盧山は毎日欠かすことなく1回に2時間以上の稽古をしているという｡毎日朝､それは雨の日も雪の日も､木々に囲まれた自然の中で｢立禅｣を行い､立ち木に突き蹴りを放ち､同士と供に組手を行う｡盧山は｢自然の中で自然と一体になりながら自分の弱さと対峙して稽古する事が大切だ｣といい､稽古に臨んでは一瞬の緩みもなく精魂を込めて体を動かす…そんな姿を私は目の当たりにした｡
そして今日､私が盧山の携帯に電話をした時､ちょうどこれからｳｫｰﾐﾝｸﾞに入るところだったようで､いつものひょうきんな盧山はそこにいなかった｡電話越しに張り詰めた緊張感が伝わってきた｡極真館の関係者によれば､海外主張の時でさえ､盧山は稽古を欠かさないという｡齢60に近い盧山にとって毎日の稽古は決して楽なものではないだろう｡それでも常に空手着に身を包み､夏も冬も稽古を一切怠らない盧山は､だから常に堂々と｢武道空手｣を主張し､鋭い眼光ながら寛容に溢れた笑顔を振りまく事が出来るのだ｡｢私には結局､空手しかないから…｡稽古だけは生涯続ける｡それしか大山総裁の魂を受け継ぐ方法は自分には見つからない｣そう言いながら笑う盧山｡これこそが日々の稽古の継続による自信の表れに違いない｡
黒澤浩樹も同様だ｡黒澤が突然のように全日本選手権の舞台に現われ､並み居る強豪を得意の下段蹴りで沈めて優勝を手にしたのは1984年､すでに20年以上も前の事である｡実力No1と言われ､｢最強の格闘機械｣と呼ばれた黒澤は幾度の苦難を乗り越え､｢冬の時代｣を乗り越えて再び極真空手の前線に返り咲いた｡そんな時､大山総裁が逝った｡律儀な黒澤は迷う事なく松井2代目館長をたて､そのまま選手としての戦いに挑んだ｡黒澤が目指したのは常にﾄｯﾌﾟの座だった｡多くの同士や戦友が戦列から離れていく中､黒澤は更に自らを追込み､極真会館を離れ､ﾌﾟﾗｲﾄﾞ､Kｰ1という未知の世界に飛び込んでいった｡
私には､全身ﾎﾞﾛﾎﾞﾛになりながら､そこまでして戦う場を求め続ける黒澤が痛ましく､また理解出来なかった｡私は次第に黒澤と疎遠になっていった｡そして今年の夏､私は黒澤と｢再会｣した｡しかし黒澤は10年前と変わっていなかった｡否､人間として､また武道家として一回りも二回りも成長したのは事実だが､それは黒澤が昔と変わらず毎日､極限まで自分を追込みながら稽古を続けてきたからこその姿だった｡
私の相棒である塚本佳子は言った｡
｢空手家の本分は空手の稽古に励む事｡それを何十年もたゆまず続けているというだけで､私は盧山先生と黒澤さんを信じる｣
組織論､正統権､経営術は確かに大切だ｡しかし武道家は如何に汗を流し､鍛練を続けるか?これこそが何よりも重要な事ではないか?空手着よりもｽｰﾂが似合い､道場よりも銀座や六本木のｸﾗﾌﾞが似合うような空手家は真の武道家ではない｡空手着を纏わず汗も流さず､やれ組織だ､裁判だ､銭だ云々を激論するだけの人間は武道家の姿ではない｡
塚本の言葉こそが至言ではないか?私はその意味で､真っ白な空手着を毎日欠かさず身に纏い､稽古を忘れない盧山初雄と黒澤浩樹こそが､真の武道家･空手家の姿だと断言したい｡
